A
階段を下りていると、後ろから背中を押される。受け身をとれなくて、そのまま落ちてしまった
「ぷっ、ダッサ〜」
「いい気味!ジェイド先生とちょっと話してるくらいで調子に乗るからよ」
痛みを堪えて起き上がると、上級生の女子達がルークを見てクスクスと笑う
どうやらジェイドのファンらしいが、最近傍にいるルークをひがんでいるらしい
「誰が調子に乗ってんだよ?ばっかじゃねーの?こんな陰湿なイジメするあんたらの方がだろうが!」
向こうは数人で、こっちは一人。だが、こんな卑怯者に負けるかとルークは睨む
「な、何ですって!?」
「可愛くない性格!ジェイド先生があんたなんかに構うのはただの同情なんだからね!」
「婚約したみたいだけど、ルゥには違う人が取っちゃったから、仕方なくあんたを選んだって言ってたんだから!!」
ズキッ、と胸が痛む
可愛くないと言われるよりも、ジェイドの気持ちが痛いくらい突き刺さった。何故自分がこんなにも傷ついているのが分からない
「何をしているのですか?」
何も言わなくなったルークに、罵詈雑言を浴びせていた女子生徒達は、思いがけない人物の登場に慌てて逃げ出した
「ルーク、どうしました……怪我しているではありませんか!?早く手当てを…」
心配そうな顔をして、伸ばしてきた手を振り払う。パシッと叩く音が、やけに響いた
「…んで、だよ?」
「ルーク?」
景色が歪みそうになる。泣きたいのを必死に堪えて、ジェイドを睨む
「何で俺なんかと婚約してんだよ!?あのオッサンにルゥを取られたから!?そうだよな、余り物を仕方なく婚約者にしたんだろ!?」
珍しく目を見開くジェイドに、ルークは口が止まらなかった
「何を仰っているのですか?いつ私がそんなことを―――」
「とぼけるんじゃねーよ!!」
「落ち着いて下さい、ルーク。私は…」
いつもそうだが、今日は特に冷静なジェイドに余計腹が立った
「てめーなんか大嫌いだっ!!ルゥのとこでも、好きな奴のとこに行けよ!!俺の前に二度と現れるんじゃねぇ!!」
止まらずに流れた涙でジェイドが歪んで見えた。彼は呆然と見ているが、ルークは構わずに走ってその場を立ち去った
残されたジェイドが、ルークの言葉にショックを受けて立ちすくんでいたなど知りもしないで
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