×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
26

▼ ▲ ▼


 アオバと連絡が付かない、と電話して来た承太郎に、仗助は心臓が厭に跳ねたのを感じた。聞けば、最近の様子を聞こうと電話したが、電源が切れているようで一向に繋がらないらしい。
 普段なら都合が悪いのだろうとさほど気には留めないものの、アオバにはストーカーの一件がある。一応家を訪ねてみると話した承太郎に、仗助は自分も着いて行くと答え、慌てて家を出た。

 途中で合流し、承太郎と仗助はアオバの家へ辿り着いた。ドアベルを鳴らすも、中から応答はない。二度、三度、鳴らしてみるが、返って来るのは静寂だけだ。

「……出掛けてるんスかね?」
「…いや。一瞬だが人影が見えた」

 そう言った承太郎の険しい表情に、仗助はごくりと息を呑む。中に居るのがアオバなら、何かしらの応答はする筈だ。それがないという事は、つまり。「まさか…アオバさんに何かあったんじゃあ……」と呟いた仗助に、承太郎が口を開く。

「……仗助。ドアを破るぞ。俺達の勘違いなら、ドアを直せば良いだけの話だ」
「りょ、了解っス…!」

 承太郎の電話を受けた時から嫌な胸騒ぎを感じていた仗助は、二つ返事で『クレイジー・ダイヤモンド』を発現させる。いつもの掛け声と共に、ドア目掛けて鋭い拳を繰り出した。
 ドアをこじ開けたのと同時、承太郎が体を滑らせるように中へと入り込む。それに続いて中に踏み込んだ仗助は、玄関に見知らぬ男物の靴がある事を見逃さなかった。

「承太郎さんッ……!」
「……ああ。どうやら勘違いじゃあないみたいだな」

 破壊音と二人の話し声に驚いたのか、廊下の奥で、部屋に逃げ込む人影が見えた。承太郎と仗助は顔を見合わせ、中へと急ぐ。部屋のドアを開けたところで、何かが風を切って飛んで来たのを捉え、二人は反射的に腕を前に出す。パシ、と重みのある何かを手で掴んだところで、仗助は目を丸くした。

「な、なんだ?リンゴ……?」
「とんだ邪魔が入ったな……」
「ッ!?誰だッ!?」

 それは赤々としたリンゴ。何処かで見覚えが、と思ったのも束の間、聞き覚えのない声が部屋に響く。部屋の奥、アオバが横たわっているベッドの前に立ち塞がっているのは、一人の男だった。
 一見して何処にでも居そうな普通の男だが、仗助は何かに気がついたように「テメーは…!?」と声を上げる。つい数日前、アオバと一緒に帰路に着いていていた時、リンゴを落としてアオバに拾って貰っていた、あの男だったのだ。

「テメーがストーカーだったとはな…!アオバさんに何しやがったッ!」
「……アオバさんは眠っているだけさ。それより、君達を招いた覚えはないんだがね」
「…それはお互い様のようだがな」

 二人の鋭い視線に怯む事なく、男はふんと鼻を鳴らして応える。二対一という圧倒的不利な状況にも関わらず余裕を見せる男に何やら違和感を覚えたところで、異変は起きた。ぐらり、視界が大きく歪む。
 がくんと体が大きく傾き、仗助と承太郎がそれぞれ崩れ落ちるようにして床に膝をついた。頭に靄がかかったようにぼんやりとして、思考が鈍くなる。明らかな異変に、仗助が表情を歪めながら「な、何しやがったッ…!?」と声を振り絞った。

「なに、簡単なことさ。君達がさっき掴んだリンゴ、あれは僕のスタンドの一部でね…あのリンゴに触れたものは深い眠りに落ちてしまうのさ」
「な、なんだとッ……!?」
「僕のスタンド、『スノーホワイト』はどんなスタンドよりもロマンチックなんだ。君達が起きる頃にはもう全て終わっているだろう…残念だったな!」

 意識が遠くに引っ張られるような、強烈な眠気が二人を襲う。鉛のように重たい瞼が降り切ったところで、仗助も承太郎も床に突っ伏した状態で一切の動きを止めた。それを確認した男は、ふんと鼻を鳴らして二人に一瞥をくれる。
 漸く邪魔がいなくなった、とほくそ笑んだ男は、仗助と承太郎に背を向け、ベッドに横たわったままのアオバに向き合った。額に掛かった髪を指先で退けて、そのまま頬に指を滑らせる。顎に手をかけて、ゆっくりと顔を近づけようとしたところで――拳が空を切って飛んで来た。