さあ、未来の話をしよう



「ねー銀時」



「あ?」



「プリンたべたい」



ある冬の日の昼下がり。
詩音と銀時はいつもの週末のように、こたつでだらだらと過ごしていた。



「プリンは生憎ありませんー。つーかあったら銀さんの方がたべたいでーす」



「ふっふっふ、あたしに感謝しなさい銀時」



「・・・え、あんの?」



「来る途中にコンビニで買ってきた」



「マジでか!」



「うん。冷蔵庫にあるから取ってきて」



「よっしゃあああ!」



るんるんで台所に消えていく銀時の姿に、詩音はこっそりと苦笑した。
さっきよりも1割増しで目が輝いている、気がする。



「うん酷くね?1割増しってほとんど変わってなくね?」



「銀時ってエスパー!?」



「うんだだ漏れだったからね心の声」



「マジでか。まあいいや、プリン食べよ!」



「んー、プリンはちょっとおあずけ」



「は?何で」



「ちょっと銀さんから大事なお話がねー」



「ええー・・・めんどくさいな」



「めんどくさいなって!」



ごめんねプリン、もうちょっと待っててとか何とか言いながらも、詩音はきちんと座り直す。



「で、何?」



「あー、うん。あのー・・・」



「・・・?」



「その、ぎっ、銀さんと、あのー・・・け、ぶえっくしょい!」



・・・あ。



「・・・銀時」



詩音のこめかみがひくひくと動いている。



「くしゃみは手を当ててしてって言ってんだろーがァァ!」



「ぐぶしっ」



容赦のない右ストレートが飛んできた。
相変わらず素晴らしい威力だ。



「・・・で、何」



「・・・へ?」



「へ?じゃないよ、結局何言いたいの?」



見ると、一発殴ってすっきりしたのか、詩音は再び正座をして銀時の言葉を待っている。
銀時はガシガシと頭を掻いて、「さっきの後じゃ全然格好つかねーんだけどよ、」と切り出した。



「格好つかないのはいつものことじゃん」



「五月蝿ェな!その、銀さんと、」



結婚、してください。



思いがけない言葉だったらしく、詩音の動きがかたまる。
そして、徐々にあかくなっていく頬。



「・・・マジでか」



「マジだよ」



「うっわ、やばい、何か」



照れる、ね。



照れながら微笑むその人を、心から愛しいと思った。











「銀さん、いい加減貧乏ゆすりやめてください。みっともないですよ」



新八に注意を受け(もうこれで3度目だ)、銀時は悪ィ、と窓の外に目をうつした。



「どんだけ緊張してるんですか」



「は?きき緊張とかしてねーし」



「どもってますよ」



新八に呆れられ、「バッカおま、これはアレだよアレ、ウン」と返そうとするとガチャリと扉が開いた。
入ってきたのは詩音・・・ではなく、土方と沖田。
ちなみに今日は隊服ではなく、二人とも私服である。



「あっれー、多串君に総一郎君じゃーん。何、祝福に来てくれたんだ」



「違いまさァ、旦那の花嫁姿笑いに来たんでィ」



「花婿ォォォォォォ!俺花婿だからね、勝手に性別変えないでくれる!」



「あり?そうだったんですかィ、全身真っ白なんで俺ァてっきり旦那が花嫁かと」



「違ェェェェェェェェェェ!」



確かに、銀時は今日白い着流しである。
小さな教会でのささやかな結婚式の為、堅苦しいのはやめてラフにいこうと詩音とふたりで決めたのだ。



「そういやァ、お宅のゴリラは?」



「近藤さんは山崎が手当てしてる。また顔腫らしたもんでな」



土方が煙草の煙を細く吐きながら言う。
どうやら居心地が悪いらしい。所在なさげに視線を彷徨わせている。



「まあ式直前の花嫁煩わせんのもいけねェや、行きやしょう土方さん」



「おお」



「だっから花婿だっつってんだろォォォォォ!」



土方と沖田が出て行って暫くすると、また扉が開けられた。
入ってきたのは詩音・・・ではなく、桂と坂本。



「ほお、いつもよりいくらかマシだな」



「おお、金時よう似合っちょるのー!アハハハハ!」



「オメーらかよ!」



がくりと肩を落とした銀時を見て、「詩音と思ったがかー?」と坂本が更に笑う。
そんな中、桂がごそごそと胡蝶蘭を取り出した。



「は?何それ、ヅラから?」



「ヅラじゃない桂だ。大体俺は銀時に花を買うくらいならエリザベスに買う」



「高杉じゃ。宇宙でばったり会うて、金時が結婚する言うたらことづけられたきに」



銀時は、鮮やかに咲き誇る胡蝶蘭をそっと撫ぜた。
花のことなどよくわからない銀時でも、高級なものなのだとわかる。



「・・・ありがとな」



「銀時、花に向かってぶつぶつ言うな。気持ち悪い」



「んだとコラ!気持ち悪さならテメーのヅラの方が上だろうが、切れ、もしくは取れ!」



「ヅラじゃない地毛だ!」



「アハハハハ、おまんらちっとも変わらんのー」



「「お前もな」」



「それもそうじゃ、アハハハハ!」



ひとしきり笑うと、坂本は「おまん、詩音の花嫁姿はもう見たがか?」と訊ねてきた。



「・・・いや、まだ」



「何をしている、早く見に行ってやれ」



「でもよォ、こう・・・心の準備が」



「昔っから、おまんは変なところで弱気じゃのー」



「だからヘタレと言われるんだ」



「だーもうわかったよ!行く!行くからオメーらも出てけ!」



まだ何か言っている桂と坂本を部屋から追い出すと、銀時は詩音のいる控え室へと向かった。
ドアを前に、一度深呼吸をする。



「・・・詩音、」



「銀時?入っていいよ」



ガチャリと扉を開けると、白いシンプルなドレス(ほとんどワンピースのようなものだ)に包まれた詩音が、椅子に座っていた。
映画のワンシーンのようなその姿に、思わず小さく息を零した。



「変・・・じゃないかな?」



「・・・すっげー綺麗」



銀時の言葉に、詩音はプロポーズされた時と思じ、照れた笑みを見せる。



「なあ、キスしていい?」



「えっ・・・でも、誓いのキスの前だよ」



「額ならカミサマも許してくれんだろ」



言うが早いか、額に軽くキスをおとした。



これからをうたおう、


(ほら、やさしい未来の足音がきこえる)


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まこ様キリリクでした。





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