ハロー、マイフレンド



「晋助ー、今日って世間一般はハロウィンらしいよ」



「・・・へェ、早ェもんだなァ」



「じじくさっ」



「五月蝿ェ」



ハロウィン、と聞いた時、高杉の表情が僅かに変化したのを詩音は見逃さなかった。
あれは高杉がちいさな痛みを堪える時の表情だと、詩音は知っている。
・・・思い出したのだろう、幼い頃、ハロウィンにちいさな菓子を毎年もらっていたことを。
戦争のなかで、菓子はなくても馬鹿騒ぎをして毎年この日を過ごしていたことを。
そして、思い知るのだ。
その幸せな時を構成していたたいせつな人たちが、もう一緒にはいないことを。
思い知って、愕然とする。



「晋助ー」



「あ?」



「お菓子頂戴!」



「は?ねェよ」



馬鹿か、と鼻を鳴らして高杉は歩調を速めた。
僅かに口角が上がっている。



「晋助、嬉しいんでしょう、お祭りだから」



「祭りは祭りでも餓鬼の祭りだ、おもしろくも何ともねェよ」



「にやけてるよ」



「・・・・・・」



少しばつが悪そうに、高杉は鬼兵隊の船に乗りこんだ。
晋助様お帰りなさいっス!とまた子が走ってくるのが見える。



「ねえ晋助、」



「あ?」



「あたしは、どこにも行かないよ。ずっと晋助と一緒にいて、毎年ずーっとお菓子をたかってやるんだから」



「ハッ、好きにしろ」



おもしろそうだと言うように、高杉が笑う。
船に戻ってきたからだろうか、完全にプライベートモードだ。



「宇宙の最果てまでついていってやるんだから。いいでしょ?」



「仕方あるめェ」



その言葉ににこりと笑って少し背伸びをしてキスをすると、高杉の目が一瞬ちいさく見開かれた。



「誓いのキス」



「上等だ」



にやりと笑って、くいっと顎をつかまれる。
しずかに目を閉じると、あまいキスがおとされた。



気まぐれな黒猫


(それは策略か、無意識か)





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