太陽



(ぬあー、眠い・・・)



ぺたりぺたり、と古臭い寺の縁側を歩く。
戦の時はいつもどんよりとした曇り空のくせに、今日は憎たらしい程晴れ渡っていた。昨日の雨で濡れている草が、太陽の光を受けてきらきらとひかっている。



(もうお昼寝しちゃおうかな・・・)



連日の戦で、体は昼夜関係なく睡眠を求める。
それは他のみんなも同じらしく、今日はそれぞれ思い思いにくつろいでいるようだ。



(あ、)



「何してんの、銀時」



「おー」



銀時は、ぼんやりと庭を眺めていた瞳をこちらに向けた。
何か見えるのかときょろきょろしてみたが、別段いつもと変わった様子はない。



「・・・水溜まりがよォ」



「ん?」



「水溜まりが、お天道さん反射してて、きれーだなと思って見てた」



成る程確かに、小さな水溜まりが点々と、鏡のように光を反射させていた。
その眩しさに、思わず目を細める。



「ほんとだ、綺麗だねえ」



「だろ?」



「なんであんたがどや顔なの」



「細けーこと気にすんじゃねーよ」



「うん全然細かくないけどね」



よいしょ、と銀時の隣に腰を下ろすと、ぽかぽかした温度に本格的に眠気が襲ってきた。寝ちゃおうかな、と呟くと、おー寝ろ寝ろ、と銀時が頭をぽんぽんとたたく。その仕草に、詩音は寝惚け眼を銀時の方に向けた。



「・・・水溜まりよりもさー」



「ん?」



「ぎんときの髪の方が、きれー」



「・・・・・・!」



人とは違う色と髪質を密かに嫌っていた銀時は、目を見開く。



「晴れの日ね、銀時の髪ってすごいきらきらしてるんだよ」



ほら、今も、と詩音が銀時の髪を触る。そのくすぐったさと詩音の笑顔に、銀時も微笑んだ。
そして次の瞬間、背中を襲った強い衝撃に庭に吹っ飛ばされる。



「テメ何しやがる高杉!」



「るせェよ。邪魔なもじゃもじゃが見えたんでなァ」



「喧嘩売ってんのかサラサラ野郎!」



どうやら高杉が後ろから蹴りを入れたらしい、どかりと銀時が座っていた場所に腰をおろし、いつものポーカーフェイスでぼんやり空を眺めている。



「あーあ、泥ついちまったじゃねーかコノヤロー。よし、今日の洗濯オメーでけってーい」



「は?ざけんじゃねーよ、いつも通り公平にじゃんけんだろ」



「はーい、銀時にさんせーい」



「さっすが詩音、わかってんな」



銀時が詩音の頭を撫でると、詩音は気持ち良さそうに目を細めた。
その様子が気に食わず、高杉は不満気に空を眺める。人の雰囲気に聡い銀時が、それに気づかない訳がなく。



「うっわ高杉くんアレですか、嫉妬ですかぷぷぷ」



「ちげェよ。ぶっ殺すぞコラ」



「こえー」



そのまま二人がいつもの喧嘩を始めると、詩音はそっと高杉の方に寄った。



「詩音ちゃァァァん!?駄目ですそんな変態エロ魔神に近づいたら!お母さん許しません!」



「変態エロ魔神て・・・だって銀時泥ついてて汚いんだもん、てかお母さん違うし」



「ざまァみろ銀時」



「汚い」と言われて落ちこむ銀時はそっちのけで、詩音は高杉をじっと見つめた。
そのまっすぐな視線に、思わずたじろぐ。



「・・・んだよ」



「晋助も、太陽が似合うねえ」



「は?」



「銀時も晋助も小太郎も辰馬も太陽が似合って、うん、みんなやさしい!」



「・・・そうかよ、」



「うん!」



にこにこと笑う詩音に高杉は微かに口角を上げ、頭をわしゃわしゃと撫で続けた。
「本当に太陽が似合うのはお前だろ」という言葉は、まだ飲み込んだまま。













「何で俺とテメーが二人一組なんだよ」



「その台詞そっくりそのまま返すわコノヤロー」



そして、再び戦場。
詩音と坂本と桂は遥か向こうで敵を迎え撃つことになっている。
銀時と高杉は奇襲を仕掛ける役だ。



「よっし、俺今日帰ったら詩音にちゅーしてもーらお」



「ふざけんじゃねーよ、あいつのはじめてもらうのは俺だ」



「うっわ、はじめてとかやーらーしー」



渡さねーぞ、と睨むと、望むところだと言う様にへらりと笑って返された。
そして、銀時は急に真顔になる。



「高杉ィ、」



「あ?」



「・・・・・・死ぬなよ」



「・・・ハッ、誰に向かって口聞いてんだ」



「じゃあ今日早く帰った方が詩音のちゅーな」


「上等だ」



曇天のなか、太陽を探す


(誰一人欠けないように、)

(きっと誰もがそう願っていた)

********
雨リクエストでした。





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