]Z:結果について


 今日は午前中から妙に気分が良かった。居心地の良くない、あいつの気配が戻った室内で、いつもならさっさと外に避難するのに一日家の中で過ごした。カレンダーに残された歪な、あいつの出張予定を指先でなぞった。風呂を洗った。ベランダで空を見上げた。タイトルのない曲を口ずさんだ。

 座り心地のいいソファの上、俺の下で怪訝な表情を浮かべる女の首筋を、一度舐める。
「…本当に」
「……うん、するよ」
 いつもと違うのは、義務感が薄いことだけだ。ただなんとなく触れたいだけの、幼稚な衝動。それとは一致しないのは、こいつの、いつも通りの諦めが沈んだ眼差し。
「リビングでは嫌」
「お前の部屋も嫌がるだろ」
「レオの部屋でいいでしょ」
「いま荒れまくってるから」
 額をあらわにして、心底厭わしそうに眉をしかめて、それから細い息を吐くこいつの、この表情を知っているのはたぶん俺だけなんだと思う。二人で過ごすようになって初めて知ったいくつかのこと。
「なあ、避妊して欲しいか?」
 笑って訊ねる。驚愕の色を浮かべた瞳に、また笑顔で、その瞼にキスを落とした。


*


「……、ぅ」
 手のひらが乳房を揺すって、その指の間で頂きを強く挟む。包むなんて優しい動きではなくて、ただ好奇心ばかりの、例えば「乱暴に扱ってもいい」と言われた中古のおもちゃのような動きだ。ほんの少しそうした後、すぐにスカートの中に手を入れたレオが、ストッキングの境目を引っ張ったあと、太もものあたりに爪を立てた。
「……レオ」
 咎める声を上げてはみても、レオは顔を上げることなく、そして私もレオの腕に触れて静止するでもなく、淡々と続く。
 下着ごと中に浅く指先が差し入れられる。めり込んでいくという表現の方が正しいのではないか。それもすぐに鬱陶しくなったのか、下着の隙間から入れた指先でそこを撫でる。
「挿れづらいかもな」
 たくし上げられてぐしゃぐしゃの上半身、まくり上がったスカートと、破られたストッキングと、下着のクロッチ部分を反対側に引っ張る手。
 顔を上げたレオは、安心した表情で笑っていた。
「ま、待って!ねえ、ゴ、」
 言い終わるまもなく、避妊具を着けていないそれが一気に奥をめがけて突っ込まれる。
「……それでも俺は、ここが一番安心するんだ」
 うわ言のような低い静かな声が、ソファが鳴く音に溶けた。

 無言で自分の部屋に戻って、服を全部脱いだ。ストッキングと下着を、紙袋に入れてゴミ箱に投げ込んだ。それでも、レオの手のひらの熱さが、怒りで震える皮膚に残って離れない。


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