18 弟子
「師匠、絶対嘘だろ―。本当分かりやすい―」 「煩いな」
お前は言った事が分からないのか。レラジェとその人は超低レベルな争いを続ける。はっきり言えば、実にくだらない。
「そう言えば、そこにいる可愛い娘は誰? もしかして、うわ、師匠最悪!! また女の子引っ掛けて来た訳?」
またという言葉に私は思わず顔が引き攣ってしまった。レラジェは助けてくれた凄く良い人ではないのか。疑いを持ってしまった。
「おい、馬鹿弟子。人聞きの悪い事言うな。前も今回も聞きたい事を話して貰うだけだ」
レラジェは頭を抱え溜め息を吐いた。
「ふーん。前来た赤髪の娘も可愛いかったけど、この娘も可愛いな―。ねぇ名前何ていうの?」
その人は私に近づいて聞く。ち、近い。私は思わず、退いてしまった。
「わ、私はテティス・アリアンロッドって言います。宜しく」
「名前も可愛いんだね。テティチャンって呼んで良い? オレはハルパス・オセ。ハルで良いよ。こちらこそ宜しく!!」
ハルパスはニカッ、と笑った。手を差し伸べられ握手する。話し方や行動がちょっと変なだけで、案外良い人かもしれない。
「さて、済んだ所で話聞いても良いかな?」
レラジェは痺れを切らして話を切り出した。
「はい。ロノウェの事だよね?」 「そうそう。じゃあ、店の中で話そうか。アッサムティーでも飲みながらな」
やっぱり、レラジェは良いセンスしている。私はレラジェに星五つ程あげたいと思った。
「オレも聞く―」
ハルパスは奇声を上げながら叫んだ。仲間外れは嫌、といじけながらだ。
「お前が聞いたって仕方ないだろ?」 「オレにだって聞く権利はあるだろ―」
燻っているハルパスを見てレラジェは溜め息を吐いている。何だか可哀想だ。私はハルにも聞かせてあげて欲しいと頼んだ。
「やり!! ありがと、テティチャン」 「全く。テティちゃんも甘いな」
ハルパスは喜び、レラジェは脱力した。全くはこっちの台詞だよ。この二人の師弟は仲良いんだか、悪いんだか分からない。
「じゃあ、入るな」
そして、レラジェはベルが鳴る店のドアを大きく開けた。
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