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夜、部屋のベランダで星を眺めているとそろりと隣にパートナーがやってきた。
「おや、珍しいですね」
『お前こそとっとと寝ないとどうせ明日もジムに引っ張ってかれるぞ』
「それはあまり歓迎いたしませんねぇ」
星の光で彼の蒼い瞳が静かに輝いている。
『…無理すんなよ』
言われた意味を理解できずきょとり、とすると呆れたようにため息をつかれた。
『朋の時といいお前は無駄に体張りすぎるんだよ。どうせアイツが乱入しなかったら隙を見て逃げるか人間ぶちのめす気満々だったんだろ?』
あいつ、というのはおそらく霊翠のことだろう。
「でも、ポケモン勝負って私に向いてないんです。力比べをしたいなら人間同士で直接殴り合えばいいじゃありませんか」
ほら、拳で語り合うって言葉もあるでしょう?と問えば昴を纏う不機嫌オーラがさらに増した。
『だから、それはお前の常識だろ?ここじゃポケモン同士が戦うのが“普通”なんだよ。大体俺らは傷だらけになるほど弱くねえ』
むしろ元々人間と旅をしていたという皐月や霊翠は言うまでもなく、一人で幾人ものハンターたちを退けてきた昴やサファリパークから脱走してきた朋も十分“強い”のだろう。
『なあ、そんなに俺は…俺らは頼りになんねェのか?何でも自分一人で抱えて解決しようとして何になる?』
昴の言葉は鋭く私に突き刺さり、揺さぶる。信用していないわけではないのに。
「私は、もう大事な人達に暴力を振るわせたくないの」
ぽつりぽつりと話し始める、それは私の過去だ。
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