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そういって素早くその体をひき寄せて、持っていたハサミで容赦なく自分の腕を切った。

『なっ…』

声を上げたのはピカチュウさんか、アブソルくんか。どちらかはわからなかったけれど。
溢れ出てくる血をピカチュウさんにかける。傷薬を切らした今、この子をかくまう方法は限られている。

『何してんだ』

「血で、匂いをごまかしました。これなら、匂いでたどられないでしょうし」

『なんでだ?偽善か?』

「強いて言うなら独善でしょうね。目の前で必死になっているものを見ると、つい応援したくなるじゃないですか」

偽善も独善も大差ねェよ、と悪態をつきながらも土を掘って血の匂いを散らしている彼はやはり、面倒見がいいのだろう。

程なくして、サファリの職員とやらはやってきた。血相を変えて
「ピカチュウを見ませんでしたか!?」
と叫ぶ様は見ていて妙に腹が立った。いや、この人が悪いわけじゃないのだけれど。

「見てませんけど…そういえば向こうの草むらを何かが駆けていったような…」

左腕を隠しながら右手で向こうを指差すと、職員の顔色はたちまち良くなった。

「あっちですね!ありがとうございます!!」

走り去った職員を一瞥して、意識のないピカチュウくんを運ぼうと腰を上げたとき。


 

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