4.世界は広く、青く、脆い
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あれから暫く、流石にもう搜索の手は伸びていないだろうと軟禁は解かれたのだけれど。
私はダイゴさんから逃げるように過ごしている。

「結鈴ちゃん?」

「(!どうしよう、うまく、笑えない)は、はい。どうかなさいました?」

咄嗟に取り繕おうとしても、なかなか上手に笑は浮かべられなくてかえってダイゴさんに心配をかけてしまう。

「…ちょっと買い物を頼んでもいいかい?」

「はい、大丈夫ですよ。何を買ってこれば良いんですか?」

「このメモに書いてあるものを買ってきて欲しいんだ。ミナモデパートに行けば揃ってるから」

「わかりました。では行ってきますね」

軟禁を解かれてすぐ、気まずさに耐えられなかった私は真っ先に海へ向かった。
そのとき、近くを回游していたホエルコくんと仲良くなった。
それ以来、こうしてお使いを頼まれたりお散歩に来たりしては他愛ないお喋りをしたり時々背中に乗せて運んでもらったりしている仲だ。
最初は怖かったけれど、慣れてくると海の上を滑っているような感覚でなかなかに楽しい。

「ありがとうございます。では買い物してきますね」

『今日は“散歩”してこないの?』

「帰るのが遅くなってしまいますけど…いいんですか?」

『僕は一向に構わないさ。キミのしたいようにすればいい』

そう、このホエルコくん、のんびりとした口調とは裏腹に男前な性格をしていらっしゃるので大変気前がよかったりする。

「では、お言葉に甘えて。今日は少し冒険してみようと思います」

とはいえ、先に買い物を済ませてしまうのだけれど。

‐‐‐*‐‐‐*‐‐‐

121番どうろは、大分制覇できたと思う。
今日もロバートさんと挨拶を交わしては奥へ奥へ歩いていく。
ナゾノクサちゃんやマッスグマちゃんと時々挨拶したりすれ違ったりしながら宛もなくブラブラと歩く。
ホウエン地方は私の知らないポケモンが多いので初めてあったとき結構驚いた。
普通は野生のポケモンに襲われたりしそうなものだけれど意外とそんなことはなくって。
むしろ何を考えてるかわからない人間よりはるかに親しみやすかった。

「…あら?」

気がつけば、ミナモから大分歩いてしまったようだ。はて、ここはどこだろうか。


 

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