彼、ユーリ・ローウェルはとても驚いていた。この世に生を受けて20年、多少の事ならそう驚きはしない自負もあったがまさか空から(しかも結界を越えてだ!)人が降ってくるなど誰が予想できようか。 これはあまりにも不謹慎な暇の持て余し方をしてしまった罰か何かなのだろうか。 とまあ兎に角目を白黒させついでに思考も白黒させていた。
落ちてきた方の女はといえば、驚く方がおかしいと言わんばかりの堂々とした態度で。
『そこの、ここは一体どこだ?』
少女は此処がどこかと問うが青年にはさっぱり理解できなかった。なぜなら、
「…何言ってんのかさっぱりわかんねェ」
言語、という大きな隔たりがあったからだ。 コテン、と首をかしげた後彼女はそれを理解し、おもむろに青年の手をとると、ブツブツと何やら呪文を唱えはじめ、女の体が光りだした。 不可解な現象をこれでもかと叩きつけられたユーリにはもう驚くほどのキャパシティは残っていない。
「ふむ、これで言葉が通じるかね?」
「あ?ああ…。お前は一体…いや、そもそもどうやって結界を…」
「待ってくれ。一度にそうたくさんの質問をされても困る。落ち着いて一つずつにしてもらえるとありがたい」
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