貴方の為に1




「ユーリ、ユーリ」
「なんだ?ルナ」
「プリン」
「あー、はいはい。んじゃ、食堂で待っ、」
「作りたい」
「てな…、って、は?」
「プリンっ、作る。教えて!」


突然ユーリを訪ねたかと思えばこれまた突然プリンの作り方を教えろと言い出したルナ。
てっきりプリンが欲しくて強請りに来たのかと思ったのにまさかの申請にユーリは少し驚いた様子。


「なんでまた突然…」
「ユーリのプリン美味しいから作り方教えてもらいたいの」


ユーリ自身甘味が好きなだけあって菓子作りの腕は中々なもの。
食べたいではなく作り方教えての発言にユーリは面食らったものの、特に断る理由もないので応じた。






「………」
「ゆゆユーリ!そ、それ以上近付かないで…!」
「無茶言うなよ…」


エプロンを着、三角巾までして気合充分なルナに手際等を教えようと近付いたところ、その距離分逃げられてしまう。
男性恐怖症を忘れていた訳ではないが、最近ルカに触れられるようになったという話を聞き、更にクレアとかではなく自分(男)に作り方を教えて欲しいと申し出たものだから少しは克服したのかとユーリは思っていたのに以前と変わらない様子であった。


「…わかった。俺も作るから、それ見て真似でもしとけ」
「う、うん」


卵をボウルに割りながら言ったユーリにルナは頷き、ユーリに倣って同じように卵をボウルに割り入れる。
量っておいた砂糖や牛乳、バニラビーンズを入れ混ぜ合わせ、念入りに濾してから蒸し始める。
その間にカラメルソースを作り、卵液が蒸す事によって固まったところで冷蔵庫で冷やす。
更にその間では生クリームと砂糖を混ぜ合わせてホイップクリームを作る訳なのだが……、


「うぉっ、ルナ!飛ばすな!」
「だって、ユーリみたいに早く動かそうとしたら〜…」


シャカシャカと手早く混ぜているユーリの横でルナは妙に力が入ってしまい、辺りにクリームを飛び散らせている。
その被害は壁や床だけでなく、混ぜているルナ本人と横にいるユーリにも降りかかる。
ユーリが制した頃にはボウルの中身、元あった量から三分の一は減っており、彼女の顔は見事クリームまみれとなった。
指先で頬に付いたクリームを取り、それを口に含める。


「べたべたー…。でも甘い」
「……(これリオンが見たらまた鼻血出すかもな)」


いつだったか、自分が猫耳メイド服をルナに着させて更にリオンに向かってご主人様発言させた時の事をユーリは思い出した。
普段冷静で大人ぶっていてもまだ16歳。多感な年頃で難しい年頃、思春期真っ只中な少年には違いない。
同じ年頃のスパーダやチェスターみたくオープンな発言はしないものの、性に対する知識と興味はある筈だ。寧ろその年頃で無い男の方が珍しい。


「ユーリ、取れた?」
「いや、まだ口の端に付いてる」
「え、どこどこ?」


言われた口の端に指を這わせるルナだが、ユーリが示した場所とは反対のところ。
違う、とユーリが言ってもその周辺を探るだけ。


「違うって、反対だ」


すっ、と自然に。極自然にユーリの細長い指が伸び、ルナの口の端に付いてるクリームを拭い取って舐める。
一瞬起こった出来事にルナは目をぱちくりさせ、ユーリはしまったと少し後悔した。


「ユーリ……」
「あ…悪い、ルナ。つい…」


重度の男性恐怖症で先程も近付くのに怯えてたルナに謝罪の言葉を述べるユーリだが、彼女は戸惑ったままでいてる。


「もう一回…」
「は?」
「一瞬だったからわからなかったけど…もう一回触ってみて」


自分が何を言ってるのかわかっているのかと突っ込もうかと思ったが、真剣な眼差しで見つめられ水を差すような発言をしてはいけないとユーリは感じた。
少し躊躇ったが先程と同じように手を伸ばし、指先で彼女の頬に触れる。
手を伸ばした時と触れた瞬間、体が僅かに跳ね上がっていたのをユーリは見逃さなかった。


「…震えてる。無理すんな」
「大丈夫…だからそのまま…」
「………」


カタカタと小刻みに震えているのは無理している証拠。
悟ったユーリは触れていた指を離し、ルナは戸惑いの表情を浮かべる。


「これだけでも充分だろ」
「そう…なのかな」
「最初、泣きそうな顔された時と比べりゃ上等だよ」
「ユー…、!」


ポン、とユーリはルナの頭を一度叩くように撫でる。
これもユーリ自身無自覚で自然に行ってしまった事だが、先程と同様、ルナは怯えた様子を見せなかった。


「不意打ちで一瞬だったら大丈夫みたいだな」
「…そうかも」


にへ、と固かった表情を崩したルナに薄く笑うユーリ。
全然克服出来てないと思っていたが、徐々に克服していっているのをお互い感じていた。
この調子でリオン以外の人達と…とルナは思いながらプリンが冷えるのをユーリと談笑して待つのであった。

















※リオン夢です。



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