昔々の物語
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さて、あいつはもうそろそろ気付く頃かのぅ…

…え?ああ、文化祭なら行ったぜよ。
俺が居た時と違ってなかなか楽しかったナリ。

それじゃあ、あいつが帰って来るまで時間も有るし、まずは昔話から始めるかのぅ



むかしむかし、目立たないが心優しい王子と男らしく優しいが気の強い隣国の姫が居た。

二人は生まれた時から共に過ごし、お互いもそれが当然だと思っていました。


そしてもう一人、少年達と一緒に年の近い侍女が居た。

仕事は出来るのだが、自分を外に出せないためいつも隅に一人で控えている彼女を、王子は姫の元へと引っ張り出し三人で過ごしました。

傍に居てほしい王子は、すぐに隅に行こうとする内気な侍女の手を絶対に離しません。
姫もそれを手伝います。

そんな王子と姫に内気な侍女も心を開いて行き、もう隅に行こうとはしませんでした。

それがとても嬉しかった王子と姫は誕生日に侍女へペンダントを贈りました。
銀の鍵に小さな石が埋め込まれたそれは価値は低いものの、侍女にとってとても大切な物になりました。


しばらく三人で過ごしている内に、姫は王子やその両親がとても気に入っている侍女に王子を取られてしまうのでないかと不安になって来ました。


そんな時、馬車で移動中の三人の元へ別の馬車が走ってきました。

三人とも怪我は少ないものの、侍女を庇った王子は頭を強く打ち半分程思い出をなくしてしまいました。


その半分の中には今まで学んできた事、ようやく王子と一緒に遊べる様になった妹の事、そしてずっと一緒に過ごしてきた侍女の事も入っていました。

自分が忘れられてしまったと知った侍女は、王子を混乱させてはいけないと昔の様に二人を影から見守ることを決めました。





しかし、それから数年後、事件は起こりました。

姫が隣国の謎の病で倒れてしまったのです。


それは王子が三人だけの秘密基地に姫を連れて行った直後のことでした。

王子は姫を連れ出した自分を責めました。

けれどそれは決して王子のせいではなく、森に住むと言われる魔女が秘密基地に仕掛けた罠のせいでした。


その事を侍女から知った王子は日に日に姫の居場所が自分のものになって行く事と、目を覚まさない姫に焦りを覚えました。


翌日、王子は妹へ別れを告げいなくなってしまいました…

王子は、大切な姫の元へ行くことを選んだのです。




王子が消えてすぐ、姫は目を覚ましました。

奇跡的に姫は病を克服したのです。


王子が居なくなったと知った姫はすぐさま何でも知っている銀色の猫の元へ行きました。

猫に王子の居場所とその場所への行き方を聞いた姫はすぐに準備をし始め、数日の内に国を旅立ちました。


姫は、大事な王子を自分の手で連れ戻すことを選んだのです。




王子も姫も国から居なくなってしまい混乱もありましたが、しばらくすると何事もなく日常が戻りました。

風の噂で二人が遠い世界で幸せに暮らしていると聞きましたが、侍女にとって二人のいない世界はとても寂しく辛いものでした…






こんな筈では有りませんでした。

魔女は薄暗い森の中で首飾りを握りしめ、酷く顔を歪めます。

謎の病は姫ではなく、王子へかける筈だったのです。


それでも、姫が倒れて王子は悲しみ弱る。

そこを狙って漬け込もうと始めはそう考えていた魔女でしたが、王子は弱りきること無く何処かへ消えてしまったのです。


魔女は王子の想像以上の姫への依存に嫉妬と少しの間とはいえ自分を大切にしてくれた二人を無くしてしまった悲しみに暮れました…


そんな時です、城に戻った侍女の前に不思議な少女が現れました。

少女は代償を払えば少しの間だけどんな願いでも叶えてあげると言います。


侍女がその少女に何を支払い、何を頼んだかは誰も知りません。

唯一知っているのは、その日から侍女も魔女も居なくなってしまったという事だけでした…






ここで昔話は終わり。

続き?そんなものは無かとよ

これは現在進行形の物語なんじゃよ、そう簡単には終わらんぜよ…






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