写真に写った歯車
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「皆ー、学園祭の時の写真出来たよー!」



例年通り盛り上がった学園祭も無事終わってから数日がたち、井上や他のクラスメイトが撮った写真の販売が始まった。


授業中や休み時間に回ってる写真が載ってる簡易アルバムには写真の下の余白に名前が書いてあり、欲しい場合は名前を書くのかと理解した。



「(やっぱり潤斗の写真が多いな…主に女装の)」



そして潤斗が写ってる写真全部にもれなく柳生と何故か幸村の名前があったのは見なかった事にして、他の写真に目を通して行く。


そうしていればいつの間に放課になったのか潤斗と井上が邑の周りに来ていた。



「あ、邑ちゃんの所まで回って来たんだ」


「ああ、さっきの時間にな」


「ほー」



パラパラとめくって行けば、女装コンテスト後の潤斗とブン太が写っている写真が。



「なぁ、何でお前の罪を数えろのポーズ?」


「頼んだらやってくれた!」


「撮ったのお前か」



まぁ半分はコイツが撮った写真だしな。


そう諦めに近い納得をした後、ふとコンテストの結果を思い出した。



「柳から聞いたんだが、潤斗と優勝した丸井の票差は1票だけだったんだってな。



「うん、惜しかったよねー

委員会で数えた時も数え間違いが無いか何回も数え直したもん」



大変だったーと笑う井上にお疲れ様の意を込めて潤斗が撫でてブンちゃん可愛かったもんなーと笑えば、即座に二人から否定の言葉が出る。



「にお君のが可愛かった!!」


「確かにブ太は今時の女子だったがお前のが断然ミステリー系で可愛…ってかお前まさかブ太に票入れたんじゃないだろうな?」


「………」


「にお君、目反らさないで」


「自分でチャンス潰してどうすんだよ!」


「(え、俺何でこんな攻められとるん?)」



キャンキャンと吠える二人は、授業開始のチャイムが鳴ると自分の席で一応大人しくなる。


しばらく時間が経ち、自分の元へアルバムが回ってきた。



「(それにしても、ようこんだけ写真撮ったのぅ…)」



落ちて来そうな瞼を擦りながら、ペラペラとページをめくればこの教室からグラウンドを写した写真にふと目が止まった。



「(ああ、確かグラウンドの屋台も暑かったけど良かったのぅ)」



玉せんに焼きそば挟んだのが美味かったなとか思い出していれば、何処かの屋台の屋根に寝転がっている猫を見付けた。


遠目からでも分かる銀色の美人な猫は今頃家で寝ているであろう飼い猫のマサハルで、良い匂いもしてたし釣られてきたのだと微笑ましかった。



「!?」



しかしそれも次のページをめくるまでの話だった。



「(仁王君、どうかしましたか?顔色が悪い様ですが…)」


「(…ああ、ちょっと変な夢を思い出しただけじゃよ)」



心配そうな隣の席の柳生に笑いかけてから、もう一度そのページに入っている一枚の写真を見る。



「(やっぱり、どう見ても【俺】だ…)」



そこには、その日は登下校時にしか着なかった制服を着た紛れも無い【俺】が居た…



「(何で…)」



とにかく今の俺には何もわからない…


そう思うが早いか、潤斗は早々に部活を休む連絡を入れると担任の解散の言葉を聞いてすぐに家へと帰った。





歯車は、既に動き出している。


それに気付くかどうかは、本人達の意志しだい…





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