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「#エロ」のBL小説を読む
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▼キスなんか難しくって

学校から二人で帰宅。私のお母さんが帰ってくるまではレオと私がこの家の守り人だ。
誰もいない家に「ただいま」と声をかけ、二人で階段を昇った。

部屋に入ると、いつも通り私のベッドの上に腰かける。「疲れた!」と叫んでブレザーを窮屈そうに脱ぎ、その辺に投げ捨てるレオに苦笑しながら、自分はブレザーを脱いでベッドのふちにかける。レオのブレザーが皺になってもいけないし、ハンガーでも探すか。
そう思って腰を浮かせたけれど、レオの、

「ちょっとまって!」

という言葉に止められる。なんで? と聞こうとしたけれど、腕を引っ張られて再び座らされてしまった。レオの目はどうにも真剣で、けれどなぜか頬が赤い。
ぎし、とベッドがきしむ音がして、レオの上半身がこちらへ傾いてくる。腕を掴んでいた手がするすると降り、私の掌に重なった。さすがに今からレオが何をするのか見当がついて、一気に顔が赤くなったけれど、レオは何も言わない。

「……レオ……」
「……っ、いい、よな?」
「う、うん」

いったい何の打ち合わせをしているのだ、と思われそうだけど。

レオの唇が、そっと私のものに重ねられる。男の人でも唇は柔らかいんだ、なんてどうでもいい感想が脳裏に浮かんだけど、レオとキスをしているという幸福感の前にはすぐさま消える運命だった。

ちゅ、ちゅ、と何度も何度も音を立て、唇がくっついたり離れたりする。うう……私たち、これでも決してキスをしたことがない訳じゃないのに、どうして毎回こんなに緊張するんだろう。ただただ、レオから与えられるキスを受け入れるしかできない自分が情けない。

ぎゅっと目をつむっていると、やがてレオのキスは止まった。おそるおそる目を開けると、真っ赤な顔をしたレオが照れくさそうに口の端を上げている姿が目に映る。

「あはは……なんかやっぱり、恥ずかしいな! 刺激が強すぎて、霊感(インスピレーション)がうまく取り出せないぞ」
「そうだね……すっごいドキドキしてる」
「おれも……うう、緊張したー!」
「うわっ」

がばっ! と突然抱き着いてくるので、二人一緒にベッドに倒れこむ。レオの心臓の鼓動が、どくどくと早い音を立てているのを感じて、私もレオにバレてるんだろうなぁと思った。
けれど、抱き合って寝転がってるうちに心臓の苦しさが解けて行って、落ち着いた気持ちになれるのだから不思議だ。

「っふふ……」
「んー? どうした、名前?」
「いや、なんかおかしいなぁって」
「なんだなんだ? 可笑しい話は大好きだぞ、インスピレーションを沸き立たせるからなっ☆」

私の声を聞き逃さないとばかりに、レオが顔を寄せてくる。ふにふにとほっぺが摺り寄せられるのが気持ちよくって、締まりなく笑ってしまう。

「だって、普通は同じベッドで寝るほうが、緊張するんじゃないかなぁ」
「むむ? でも名前、ドキドキしてないだろ?」
「うん。レオもね」

なんだか世の中の恋人たちと順序が狂ってる気がするなぁ、とぼんやり思う。好きな人と同じベッドで寝るとか、同棲したいとか、そういう願望は、一通り今までの人生の中で叶えてしまっている。レオが私の部屋に平気で居座ることもあれば、私がレオのベッドで寝ているときもあるし。

「一緒にいるのは当たり前だから、あんまりドキドキしないな」

レオがさも当然のように言う。それがどれだけ傲慢なセリフか、彼は分かっちゃいないだろう。でも私も、それが当然だと思う。王様と女王って呼ばれている人間にはふさわしい傲慢さかもね、なんてちょっと思った。

「あ、勘違いしないでほしい! おれはおまえと恋人っぽいことしたいと思ってるぞ?」
「うん、わかってるよ。最近、手を繋いで帰ろうって言ってくれるし」
「わかってくれた? よかったー!」
「でも正直、手をつなぐって小さいころは当たり前だったよね」

思い出すように言うと、レオも苦笑して頷いた。

「だろー? だから、恋人っぽいことって言ったら、その……キスくらいしかなくて……」

でもレオは誰かと付き合ったことないから、毎回キスするときはおどおどしてる。……なんて言ってる私も同列の人間で、レオのそんな様子に気づくたび、アワアワしてるんだけど。

「おれ、ずっとおまえのこと好きだったから、ちゃんと今までとは違うってわかってほしい……」
「……正直、今のセリフで大分ドキドキする」
「大丈夫、おれも心臓痛い……」

まったく、二人して恋愛経験値まで同じだ。これじゃ相当足並みも遅いだろうけれど。
でもまぁ、今までずっと足並み揃えてきた訳だし。私たちのペースでやっていけばいいと思う。

「レオ」
「なんだ?」
「もう一回キスして」
「うっ……は、恥ずかしいじゃん」
「ベッドの上でキス、恋人っぽいでしょ?」

意地悪を言っても、どうせ私の顔も真っ赤だ。おかしくって二人また笑った。レオが少し体を動かし、私の上に被さるようにしてキスをする。傍から見れば大人な光景でも、私たちには精いっぱいの、子供のようなキスだった。

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