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俺の吸血鬼兄がこんな顔をするわけがない!


「ああ? 何見てやがんだ名前ちゃんの分際でよぉ? いつ俺様を見ていいって許可を出したっけかあ?」
「じゃあなんで付いてきたんだよ、零……」
「零『兄さん』と呼べ。敬意が足りねぇ」

たかが双子のアニキに兄さんとか呼ばねえだろ……という言葉は飲み込んだ。譲歩、というかそれしか選択肢はないのだが、とにかくお望み通り「零兄さん」と呼ぶ。すると謎に満足して、俺に絡むのをやめてくれるのでもうこれでいいや(思考放棄)。

まったく、大体たまの休日に! 俺が! 買い物に出かける羽目になったのは、こいつのせいなのだ!

零が俺の部屋に入ってきて、いきなり俺に喧嘩を売ってきたので「いやいやいやヤンキーの相手とか無理うわやめろこっちに来るな!!!」と叫びながら手あたり次第に物を投げつけた結果、うち一つが俺の壁掛けタイプの鏡にクリーンヒット。無残、鏡は粉々に。

で、零はそれを見て「怖がらせてごめんね」の一言どころか「ちょうどいいじゃねえか。デートするぞ名前ちゃん。オラ、二分で支度しな」とかどこのジブリ映画ですか並みの理不尽要求をしてきて、俺をこの不思議なアンティーク店に連れてきたのだった。

「鏡……あー、どれがいいんだろ……」

店員さんに案内してもらい、たどり着いた壁掛けタイプの鏡の群れを眺める。大から小まで、シンプルから装飾過多なものまで、とにかくまぁ様々だ。零はなんで、こういう妙な店を知ってるんだろう。

「おいおい、早く決めろよなぁ。鏡買ったら、いったんこの店に置かせてもらって遊園地に行くんだからよぉ」
「初耳なんですがそれは」
「言ってね〜からな。名前ちゃんごときが俺の計画に文句をつけるつもりか? 良い度胸じゃねえか」
「ヒェェ……なんでもないでしゅ……」

零の睨みは迫力ありすぎるので、慌てて目を反らすどころか背を向けた。怖い怖い。怖すぎだろこのヤンキー。友達居ないからって双子の弟とかいう弱者の俺を利用しないで頂きたい。

第一俺のこと嫌いなくせに、なぜ連れまわすんだ……。俺から声をかけてもすっげー渋い顔するくせに。赤の他人にアドバイスを乞われてもニコニコ笑顔なんですけど、血を分けた俺にはなぜこんなに塩対応なの? マジつらい。構ってほしいかと言われれば答えはいいえですけども。

ってか、マジで帰ってくれないかな……俺一人でも買い物は出来るし……と思いながら、こっそりと俺様アニキのご機嫌を商品の鏡越しに伺うと。

「!?」

な、なんということでしょう。
そこに居たのは、くっそ甘い表情と優しい顔で俺を見つめる朔間零らしきものの姿が――! 慌てて振り返って表情を確認すると、

「ああ″? ちんたらしてんじゃねえよ」
「わ、わかったって!」

やっぱ般若顔じゃん。じゃあさっきのは幻覚……と思ってもう一度鏡に視線を送る。

すると今度は、一眼レフを構えて俺の写真を撮る零の姿が――! おまえ、電子機器全般苦手じゃなかったのかよ!?!? という疑問よりも、何勝手に写真撮ってんの!?? の気持ちが勝るのでツッコミ役が不足してる。

オマケに何かぼそぼそと言っているようだ。商品を選んでいるふりをしながら、全神経を耳に集中して音を拾おうとした。ええと何々、なんて言ってるんだ……?

「はぁ……名前の後ろ姿……バックで犯したくなる……今夜のおかずはこれで決定だ。というかここでしけこみてえな。鏡張りで名前の隅から隅まで見れる……最高じゃねえか……」

最高に頭がおかしいの間違いだろ!!!


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bkm