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俺の騎士系弟がストーカーなわけがない!
「ただいま、ルカ」
「おかえり〜」

キラキラと輝かんばかりの騎士様対応のレオと、ニコニコ笑顔のかわいらしいルカ。うん、今日も俺の弟と妹は世界一の美男美女だ。まったくなんで俺はこいつらの兄として生を受けているのか一ミリも理解できない。

完全に顔面偏差値的な意味で2ランクくらい上の時空になるべく近づかないよう、そっと彼らの傍を横切る。大学生のアニキじゃ、高校生の青春オーラには適いません。そもそも青春ってなんだっけテヘペロ的な感じの進学校に通ってた俺である。下二人がアイドル科とか、ほんと俺可哀そう。

なんてことを思いながら今日のゲー板はどうなってるかな〜新情報はよ、とか脳内でつぶやいていると、急にパシッと手が掴まれた。

「兄さん、ただいま」
「お、おう」
「おれ、今日は兄さんのこと迎えに行けなかったけど……明日は兄さんの大学まで迎えに行くからな!」

この発言である。なぜこんな喪男系アニキにまで騎士様対応をしてくれるのか分かりかねるが、こいついわゆる兄妹大好き人間らしい。ソースは朔間くん(大)だ。彼は俺と同い年、かつ中学が同じだったので面識がある。

「え、いやいいよ。レオだって忙しいだろ?」
「別に平気だけど。兄さんが一人だと危ないじゃん」
「そ、そうかー……じゃあ、無理しない程度によろしく」

ホントは来ていただきたくないのだが。
だって、こいつが俺の弟と友達にバレてみろよ? 「えっ、貴方の顔面偏差値低すぎ……!?」って目で見られるわ。確実に。

でも、なんかこの前「来なくていい」って言ったら次の日なぜか誰かに後ろからつけられてしまったので、確かに最近は頭おかしい奴が湧いてるのも事実。

正直レオと帰ってるときこそストーカーするべきだと思うんだけど。なんで俺みたいなフツメンにストーカーが付くんだ? 世の中は不思議に満ちている。ふしぎ発見! 

……おれにストーカーがついてるとか、永遠に発見したくなかった事実だが。



「なぁ名前、なんかすげーイケメンくんがお前のこと呼んでるんだけど」
「うげっ……」

時刻はちょうど午後四時頃。あいつまだ学校は終わってないか、終わったばかりのはずなのに! なぜもう来ているんだ!? と思いながらレオを待たせないために急いで教室を出ようとすると、思いっきり誰かにぶつかった。

「あいてっ! す、すみませ、」
「くっくっく、相変わらずあわてんぼうじゃのう、名前くんは」
「え、零!?」

まさかの違うイケメンが来ていた。
一週間ぶりくらいに会った零は、ゆるくウェーブした髪を少しくくっていた。最近暑いもんな、分かる。教室と外の温度差に死にそうになるもん。

「何か用事でもあんのか?」
「うむ。今日は木曜日じゃろ?」
「あー、お土産に何かスイーツでも買って家に帰ろうって算段か」
「そうなのじゃ。名前、コンビニスイーツとか好きじゃろ? 良ければ相談に乗ってくれぬか」
「ふっ……伊達にデブ活かな? レベルにスイーツ食ってる訳じゃねえんだ、任せろ!」
「そこまで太ってはおらんじゃろうに」

そこまで、というあたりが零らしいからほんと訴訟。ダイエットしますよ、言われなくても。

まぁ、せっかく零と会ったんだ。言われるまでもなく付き合おう。

「あ、じゃあレオに連絡入れとこっと」

『今日は友達と帰るから、俺のことは気にしないでいいよ』と手早く打ち込んで送信。可愛い猫ちゃんのスタンプまで押す、この女子力の高さ……! まぁ男子なんですけどね。

さて、零と連れ立って近所のコンビニへ向かう。コンビニスイーツといえばリーソンなのだが、一番近くとなればスリーセブンだ。どこがいい? と聞くと「おぬしの好きなところで構わぬよ」と穏やかボイスが返ってくる。「お前は俺の彼氏かよwww」と草を生やしても怯まないあたり、零はやりやすい相手だ。

「んん? 名前、携帯が光っておらぬか?」
「え?」

ズボンのポケットを見ると、確かに通知を知らせるライトが点滅していた。画面を開くと、『レオ:新着メッセージがあります』の通知。何気なく指でスワイプすると、俺は「ファッ!?」と道端で叫ぶ奇行種と化してしまった。

「なんじゃなんじゃ?」
「あっ、待っ」

零が怪訝そうに手元を覗き込んでくる。文面はこうだ。

『なんで? おれは他の男より名前のこと知ってる。名前のこと守ってあげる、名前のこと一日中見てる。ずっとずっと見てるよ、おれの兄さん。おれだけの兄さんだもんな、ルカたんにだってやらない。名前、今どこ? どこにいるの? 昨日、おれが迎えに行くって言ったじゃん。いきなり他の男に誘われて、仕方なくついて行ってるんだろ? 危ないからおれが迎えに行く。場所教えてよ』

な? クレイジーサイコホモ以外の何物でもねえ文章だろ? これが実の弟から送られてくる俺、ほんとに可哀そう以外の何物でもねえ。

ほら、同じブラコンでも節度あるブラコンの零とかドン引きじゃん。

「お前、これマジかよ」
「マジだよ……」

おじいちゃん口調も抜け落ちるレベルの衝撃度。これでこのクレイジー以下略文章の破壊力を理解できたと思うんだ。

『どうしたんだよ兄さん、おれは兄さんの騎士だぞ? 兄さんの居場所を把握するのは当然だ、じゃないと守れない。なあ早く教えて』

「おいおい、適当に言い逃げしとけよ」
「わ、分かってるよ……えっと、『大丈夫だ、問題ない』とか?」
「問題しかねえんだよ……その文章」
「それな」

人間焦ると、かえって饒舌になるらしい。すっかり素になってる零とノリで会話をしていると、またメッセージが送られた。

『見つけた』

……なにこれホラー映画?

『ねえなんでレイといるの』

『おれに隠れて浮気? どうしたんだよ兄さん、兄さんはそんなやつじゃないだろ?』

怖すぎワロタ。
返信する暇もなく矢継ぎ早に送られてくるこのメッセージどうしろと。そもそも浮気って何それ怖い。いつからそんな関係になったんですか分かりません。つーかお前、どこで見てるの!?

「……そういや名前よ、ストーカーは捕まったのかえ?」
「い、いや捕まってないけど。ってそれどころじゃねえだろ! レオどこにいるんだよ!?」
「ふむ。察し、という奴じゃな」
「は!? 何を察したんだお前は!?」
「知らぬが仏じゃな……」

遠い目をした零に微笑まれてしまった。いまストーカーの話してる場合じゃねえだろ、おかしな奴だな……?


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