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何度も何度でも、

恐る恐る、その唇に自分のものを重ねてみる。未知の感覚だったけれど、触れてみれば案外柔らかく、すこしあたたかい。どうすればいいのでしょう、と尋ねて甘えたい自分と、それを恥じる自分がせめぎあう。

「……お姉さま、どう、でしょうか」

これで合っているのか。それを聞きたかった。
思えば女性とこういった関係を……恋人関係を築こうと考えたことはなく。当然、キスなんて思いもよらなかった。
だから、悔しいけれど敬愛するお姉さまをleadすることは叶わない。

「ど、どうって……」

お姉さまは戸惑うように視線を反らされた。拒絶ではないことは、彼女の薄く染まった頬を見れば明白。けれど、やっぱり自信がない分、しょんぼりと肩を落とした。
それを見て彼女が行動を起こさない訳もなく、慌てて私の肩を掴んだ。

「あ、いや! へたくそとか言いたいわけじゃないよ!」
「いえ、よいのですお姉さま……司は未熟者ですから……」
「つ、司くん! 元気出して、えっと……ええいっ」

お姉さまが何やら気合の入った声を出されたと思ったら、視界を彼女にhackされた。ふに、と唇に僅かな感覚が伝わる。
キス、されてる……とぼんやり状況を理解しかけた時には、柔らかな熱は離れてしまった。
お姉さまは、キスをされたはずの私より真っ赤になっていて愛らしい。無意識にその頬に触れると、びくりと肩を跳ねさせた。自分がとんだ失礼をしでかしたと気づいて掌を離そうとすると、彼女は頬を私の手に摺り寄せる。幼げなキスに、幼げな動作は、私に安心を与えてくれた。

「お姉さま……?」
「これで、わかったでしょ? 私も、同じだよ」

キスなんかしたことない。そういって恥ずかしそうに笑う彼女は、司には一層眩しいモノに見えた。近しい熱であり、遠い光。触れる距離にいながらも、彼女はやはり敬愛すべき先輩でもあると思う。
『Knights』の先輩方が、どうして彼女を仲間に引き入れたのかが分かった気がした。孤高の騎士に、この熱は安らぎを与えてくれる。個人意識の強い彼らだからこそ、この女性は眩かったのかもしれない。

けど。

「もう一度、いいでしょうか」
「え、えっと……」
「Please……」
「……うん、いいよ……」

少し恥じらいながら、睫毛を伏せるこの少女は、間違いなく私のものだと。
先輩方にもいつか、それを示そう。なんて、Gentlemanらしからぬ欲求が顔を出す。それをごまかす様に、唇をもう一度重ねる。少し触れては離れ、また重ねる。そんなはずはないけれど、まるで引き寄せられるように。

「お姉さま、」
「司くんっ……」
「口、開けて……」
「……あ、」

純粋無垢な子供が、超えてはならないlineを飛び越えるように。
二人、今まで至らなかった場所まで、爪先を踏み入れたい。



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