×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

天使と悪魔なんか知らない

※行為中の話。描写はないです。

ーーー

絵画を見た。
ソドムの町を、天使が燃やし尽くす絵だ。人間なんかちっぽけで、とてもじゃないが天使たちへ抵抗するすべはない。

となれば、実は天使も悪魔も大差ないのでは、なんて思う今日この頃。

ぽたぽたと私の頬に落ちてくる水滴。美しい金糸から、涙のような汗が滴り落ちる。
――彼のもたらす快楽をどうしても拾ってしまう自分が、なんだか汚らわしく感じてしまいそうなほど、まっとうな美しさを持っている英智。天使みたい、とぼんやり思っていた。

「ねぇ、死んじゃう」
「気持ち良すぎて、だったら嬉しいのだけどね」
「違う、英智が……」
「好きな子とセックスしてる間に死ねたら本望だよ」

だめ。
英智、そんなに激しい運動していいの? だめでしょ、絶対に。そう言おうと思って口を開いたけれど、突然顔を掴まれ、そのまま唇がふさがれる。

目に移ったのは、金糸ではなく、私と同じ色。

「っ、ふ……ぁ」
「……愛し子や、病人だけではなく、老人も気遣ってほしいのう」
「零さん、英智しんじゃうってば」
「それは、我輩にも入れて欲しいってことでいいのかえ?」
「ちがっ、だめ! も、やだって……」

私の背後に回り、理性も知性も掠め取るように囁く零さん。人に甘やかな夢を見せようとしてくるあたりが、なんとも悪魔のようだ。自分と似ていると評された顔を見るけれど、やっぱり零さんの方がずっと綺麗だ。

似ている、妹のよう、愛し子。全部が全部身内に、家族に向けられるようなワードの癖して、零さんはどうして私を抱くのか。背徳感や禁忌を感じさせてくる所は、やっぱり悪魔に近しい。

なんで、どうして……私は、天使と悪魔に抱かれてるんだろう。
分からない、目を閉じてしまいたい。見なかったことにしたい。私は関係ないと錯覚していたい。

だって怖い。人間は、天使にも悪魔にも、抗えないと。あの絵画が語っていたのだから。

――どっちの恋情も、知らないふりをしていたいのに。



戻る 進む