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エンドロールのそのあとで 

巷でね、流行ってるそうだよ。いわゆる同人誌が。

『Queen of hearT』

という、一夜だけ現れ、それ以降姿を消したユニット。そういうミステリアスなものは人間を惹きつけやすいのはよくわかるが、かといって『夏はつ』とかいう謎のCPが生まれるのは如何なものか。表記ゆれは『赤白』『ハート夫婦』『13×12』らしい。私の人生で知りたくなかった事実ベスト10くらいにはランクインしたわ。

いや、別にその嗜好にアレコレ口出しするほど無粋な輩ではないと自負している。わかる、年下攻めいいよね。うん、でも、さすがに健全な青少年がこれらを目にしたら発狂するから本当に許されない。実際私はしかけたぞ。

夏目くんの携帯にめちゃくちゃフィルタリングかけたい。お子様用くらいのドギツイ制限かけさせてくれ頼むから。先輩(しかもホントは女)とくんずほぐれつしてる漫画とか小説とか、マジで失神モノだろう。

「今更ながら、本当に本名で出てなくて良かったわ」

フッ……偽名を使ってなかったら死んでたところだったぜ……! 的なノリで一人苦し紛れのふざけを入れてもただただ辛い。

「まぁ、何はともあれ大盛況。生徒会側のユニットを抑えての、最優秀ユニットとして勝利を得たのですから、喜ばしいことですね……♪」
「そりゃそうだけど! 渉はウサギ仮面だったから被害なかっただろうけど! これは!! いかがな!! ものか!!」
「私はいかなる演出も尊びましょう、愛でましょう! 貴方たち『Queen of hearT』のファンが残した愛の結晶、むしろ愉しんでは如何です?」

私の叫びをさらりとかわす渉。いや、しかし渉の大事な後輩くんが、こんな同人誌のネタにされていることに関してはスルーしてはならないと思うのだが。だが。……と語尾を二回言って強調しても、二連続スルーを決め込まれたのでホント……解せぬ……。

「みてください、ちよ。この『いらすと』は、かわいいですね〜?」
「奏汰……見ないからね?」
「なんでいやがっているんです? ほら、この『いらすと』もいいです」

そもそも数時間前、奏汰が拾ってきたか貰ってきたかした一冊の同人誌で、私はこの……じゃ、ジャンル? の存在を知ったのだ。
奏汰くんが持ってきたのは全年齢対象、ほのぼのしたものだったからまだしも……ネットには余裕で18禁ものが転がっていた。控えめに言ってヤバすぎる。

それに渉は「そんなに気にするほどでもないのでは?」みたいな顔をしているが。今貴方の目の前で、奏汰が見ているから、かろうじて『絵本読んでるのかな?』と思わせる清廉さが保てているだけです。

「人のうわさも七十五日と言いますしねぇ。私はこの言葉は大嫌いですが、今回ばかりは貴方の役に立つと思いますよ」
「そ、そうだね……2か月ちょっとで皆忘れるよね……」
「ええ、ええ。ですから、今日も張り切って零の小間使いをするといいでしょう……♪」
「すごい……! 殺意しか湧かない!」
「零への愛情ですね、分かりますとも☆」

殺意って言ってるでしょ変態仮面さん!

とにかく、何はともあれ零さんとの約束は果たしたのだ。今日も五奇人と、仲良しこよし……とまではいかないものの、背中を預けあえるくらいの存在になれればいいな、なんて思うのだった。


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