「よく似合ってるじゃなあい!」

 男組四人を見て嬉しそうにきゃっきゃしているネイサンの服装は、いつものピンク色を基調としたスーツではなく、黒に近い深い緑色をしたドレスに身を包んでいた。手には木の杖、頭にはドレスと同じ色のとんがり帽子。ドレスには太ももまであるスリットが深々と入っていた。

「ネイサンも魔女っぽくて良い感じじゃんか」
「……ぽいというよりも本物にしか見えないですね」
「あらヤダ、褒めてくれてありがと」
「褒めてません」

 すりすりと体を寄せるネイサンをバーナビーは手で払った。そんなバーナビーもいつもの本革のジャケットではなく、カッターシャツに黒いマント。カールした髪は綺麗にまとめられ、前髪はオールバックにされている。

「ていうか、このコスプレはなんですか?」
「吸血鬼。つかコスプレじゃねーよ、仮装な! ハロウィンだから!」

 バーナビーとお揃いの恰好をした虎徹が親指を立てがら言った。虎徹もまたオールバックにしていて、いつもより少しだけ大人な色香が漂っている。
 いつもが大人気がないだけかもしれないが。

「そもそもハロウィンって明日じゃないですか。なんでまた今日、」
「良いじゃないの。た・ま・た・ま、今日みんなが集まったんだから」
「そうだともバーナビー君! それに、たまには息抜きも必要だとおもわないかい?」

 白い歯を見せて笑うキースの頭には太いボルトが刺さっていた。ボロボロのシャツとジャケットを着ている。フランケンシュタインの仮装のようだ。

「まあ、キースさんがそう言うなら」
「ワタシ無視!?」
「はっはっは! ところでイワン君の頭についているのはなんだい?」

 白装束を着たイワンの頭には三角形の布が付いていた。日本人には馴染みのあるそれを指差してキースが訊いた。

「こ、これは天冠っていうんです。日本のお化けにはみんなついてるんですよ」
「テンカンというのか! イワン君は博識だなあ」

 はっはっはと声をあげて笑いながら、キースはイワンの頭をくしゃくしゃになるまで撫でた。
 そのすぐ横で虎徹がアントニオを見て噴き出した。

「ちょ、アントニオ、お前超ウケる!」
「笑うんじゃねえよ!」

 アントニオの頭には大きな耳。そして腰からはふさふさとした尻尾がだらんと垂れていた。本人は狼男のつもりらしいが、ただ犬耳のついた大男にしか見えない。

「牛から犬に転職するつもりかよ!」
「余ってたのこれしかなかったんだからしょうがねえだろ!」
「やっほー、お待たせー!」

 部屋に入ってきたパオリンは、オレンジ色のドレスに着替えていた。スカートの裾の部分が膨らんでいる。かぼちゃをイメージしたドレスだとすぐにわかる。頭に葉っぱの飾りをつけていた。

「おーおー、似合ってんじゃねえか!」
「本当!?」
「パオリン可愛いわよ」
「ありがとうネイサン!」

 照れ笑いをするパオリンの頭を虎徹はポンポンと撫でた。
 すぐ横でキョロキョロしながらキースが訊いた。

「ところで、あとの二人はどうしたんだい?」
「外でごねてる」
「ごねてるって……」

 パオリンは両手をあげて溜め息をついた。一同の視線がドアに向かう。
 ドアの外側から何やら声が聞こえてくる。

「あ、あたしは良いからシシー先に行きなさいよ!」
「申し訳ありませんがそれはできかねます。柱から手をお離しください」

 カリーナとシシーの声だった。どうやらカリーナが部屋に入るのを渋っているらしく、シシーが必死にそれを連れて来ようとしているようだ。

「いーや! こんな恰好であいつの前になんて出れるわけが、」
「往生際が悪いのです。こうなったら少々手荒な事をさせていただきます」
「うわ、ちょ、ちょっと……っひゃ、ははっ、やめて、いやぁ、あっははははっ!」

 突然カリーナの叫び声に近い笑い声が部屋の外から聞こえてきたかと思うと、十秒と経たずに自動ドアが開かれた。
 げっそりとした顔でシシーに引きずられてきたカリーナは際どいミニスカートに網タイツで、ヒーロースーツと同じかそれ以上の露出のある服を着ていた。頭には角、背中には小さなコウモリの羽と尻尾がついている。ドSの女王様が小悪魔の恰好をしているようにしか見えないが、ファンが見たら垂涎モノだろう。
 一方のシシーといえば、カリーナまでとはいかないが、膝より少し短いスカートでフリルのたくさんついた黒いドレスに、猫耳と尻尾を付けていた。どうやら化け猫の仮装らしい。カリーナと見劣りしない姿に、男子組は声をあげた。

「二人とも素晴らしい、そして素晴らしすぎる!」
「似合ってんじゃないの、二人とも」

 イワンは黙ってコクコクと頷いている。その顔は少しだけ顔が赤い。

「さすがだなカリーナは。なんでも似合うなあ」

 純粋に誉める虎徹の顔を見るやいなや、カリーナは顔を真っ赤に染めてわなわなと振るえだして、虎徹に噛みつくように怒鳴った。

「ば、ばばばか、ばかな事言わないでよばかばか!」
「ばかばか良いすぎじゃない?」
「うるさいばか! もう知らない!」

 カリーナはぷいっと顔を背けてしまった。恥ずかしさのあまり怒鳴ってしまったカリーナの心情がわかるはずもなく、虎徹は怒られた原因がわからずに肩を落とした。

「カリーナさん、最近俺の扱い酷いと思うんだけど……」
「お前なんか変な事でもしたんじゃねーの?」
「いやするわけねーだろ」

 親友の心無い言葉に虎徹は頭を掻いた。
 ネイサンが周りを見て手を叩いた。

「それじゃみんな揃った事だし、次はパーティーの準備をしましょ!」
「「はーい」」
「普通準備してから着替えません?」
「準備するところからパーティーは始まっているのさ!」
「意味がわからないです」
「アタシたちは部屋の飾り付けしとくから、シシーはハンサムと料理とかお皿の用意しといてよ」

 ネイサンがバチっとウインクをしてシシーに合図を送った。バーナビーはそれには気づいていない。

「かしこまりました」
「じゃあ行きましょうシシー」
「はい、バーナビー様」

 バーナビーとシシーはキッチンに行くためにリビングから出て行った。
 二人の姿が消えたと同時に、七人は目を合わせて頷いた。

「バニー行ったぞ! 下準備しとけよ!」
「わかっているよ虎徹君!」
「おうともよ!」
「頑張るぞー」

 「おー!」と七人は掛け声をあげた。
ハロウィンまで後四時間。




|


TOP
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -