褒美か罰か | ナノ


▽ リアルな夢


「ただいまーっ!」



放課後、部活をしてない私はそのまま学校から直帰!友達と遊ぶ約束もしてないので自転車に乗って自宅にたどり着いた。
最近暑くなってきたので汗っかきな私は額にうっすら汗をかきながら家の扉を開けた。二階に繋がる階段をあがると我が家の愛犬が可愛らしくお出迎え。



「ミルクただいま!」

「わふっ!」



我が家の愛犬のミルクはミニチュアダックスフンドのブラックタン。茶色の可愛らしいまゆげがチャームポイント!
そしていつも思う。

テツヤ二号とミルクが戯れてる姿を黒子っちと一緒にニコニコしながら見つめていたいな…と。
部屋に入れば一番目立つところに置いてある"黒子のバスケ"のマンガ。最新刊の22巻までちゃんとある。

そうです。私は黒バスクラスタなんです!





「ホントにキセキの世代とかイケメン揃いすぎだわ…」



こんな人たちと常にいられたなら、どれほど幸せなのだろうと何度考えたことか。一日の大半は黒子のバスケのアニメを観るかマンガを読むか夢小説やなんやらに入り浸っている。どっぷりハマってしまったのだ、黒子のバスケに。



「毎日毎日飽きないわね、黒バス観てて」



今日もニヤニヤしながらミルクを抱いて黒バスのアニメを観ていると若干ため息まじりでその言葉は母の口から吐き出された。

…だが、正直心外である。



「私が黒バスに飽きるという運命はありえないのだよ。」

「あー、ハイハイそうね真ちゃん」

「大事な話を流すな、高尾っ!」



母親もよく一緒に黒バスを観ているのでそこらへんにいる上辺の黒バスファンよりは詳しいはずだ。
こうしてふざけて真ちゃんと高尾のやりとりを繰り広げて私は再び視線をテレビにやる。



「こんなカラフルズが三次元にいたら色んな意味でヤバイけど会いたい…!」



三次元にいたヤバイけど、二次元に飛んでみたいとは思う。だって、こんな彼らに直接会ったら……





「早く寝ちゃいなさい。いつまでマンガなんて読んでるの!」

「だって黒子っちが私を離してくれない…!だからまだ寝れない!」

「お姉ちゃんマジキモい。そんなこと言うなら二次元にでも飛べば?」

「飛べるなら私も飛びたいのよ!二次元に行ってキセキの世代とイチャイチャして…!」

「キモ。だから彼氏できないんだよ」



それを言われてしまうと胸に大きな傷を負ったような気になってしまう。妹は二次元には興味はないようで黒バスクラスタである私を非難の目で見る。
ああ。黒バスに惹かれないとは可哀想な子だと寧ろ私は哀れに思ってならないのだが。

開いていた黒バスのマンガを渋々と閉じて12時を回っている時計に目をやってから布団に入り眠りについた。
明日もいつも通りに起きて、お弁当作ってから行かなきゃな…
そんなことを考えていたら、あっという間に夢の世界に入っていた。

そこはどこか見覚えのある場所で。体育館のようであるが私の通っている体育館とは違った。でも何度も何度も見たことのある体育館だと思う。



「私ここに来たことあるっけ?」



中学のときにバレー部に入っていたのでそのときに練習試合か公式戦かのときに訪れた体育館だろうかと考えても、思い当りはこれといってない。
誰の声も聞こえないし、音もない。本当に私の存在感と呼吸の音と、静寂しかない。

何かが起こる気配もないので、端っこに落ちていたバレーボールを手に取った。久しぶりに触ったバレーボールの感触になんだか笑みがこぼれてしまう。
それを壁に打ち付けてスナップの練習をしてみたり、アンダーやオーバーをやってみたりした。

するとさっきまで誰もいなかったはずの体育館の入り口に誰かがいる。…それも、一人じゃなくて何人か…
そしてその人たちは私を見ながら不審そうな目をしてこっちに向かってきた。はじめはその入り口から入る逆光の影響でぼやける程度しか顔は見えなかったのだが、近づくにつれてハッキリと見えてきた顔を見て私は絶句した。あれほど会いたい会いたいと思っていたあの人たちだ…!!!



「きっ、キセキの世代!?」



私が発したその言葉は、まだ静かな体育館にかなり響いた。
そのときに思い出した。ここは私が来たことある場所なんかじゃない。黒バスのマンガを見て幾度となく登場した帝光中の体育館だ…!!
そして入口から入ってきたのはなんともカラフルな頭をした集団、キセキの世代!
彼らは体育館の中に既にいる私を見てひどく驚いた顔をしている。それもそのはず、私は何故か帝光中とは違う自分の通っている高校の制服を着て彼らを指差してキラキラした目をしているのだから。
すると一番前にいたあの赤髮のあの、あのかの有名な赤司様が私に声をかけた。



「君は、誰なんだい?見る限り誰の知り合いでもない。そして帝光中の生徒のようでもない。君は…どこの誰だ?」

「あ、私は月麗華です。貴方たちが知らなくても私は貴方たちを知り尽くしてます!今は高校生だけど…そのうち貴方たちと同い年になります!」



あまりの興奮気味に早口でまくし立てた私の自己紹介に彼らは少し引き気味のようだ。まあでもそれもそうだ。初対面の見知らぬ女にいきなり「貴方たちを知り尽くしてます!」なんて言われたら…ねえ。
でもこんな状況にまでも怖気つかない赤司様はズカズカと体育館の中に入ってきて、私の傍まで寄ってきて口元を緩めて言った。



「俺たちの事を知り尽くしてる、か…なかなか面白いこというじゃないか。」

「いやいや赤司っち!?知らない人にいきなり知り尽くしてる、なんて言われたら普通怖いって思うっスよ!」

「そうなのか、黄瀬。俺は面白いと思ったが…そうだ。緑間はどう思う?」

「俺も黄瀬と同じく怖いと恐怖心を抱くのだよ。それは俺と黄瀬だけでなく恐らくここにいる赤司、お前以外そう思っているはずなのだよ」



目の前で繰り広げられる会話。しかもそれはアニメでもドラマCDでもイベント会場でも見られない聞けない内容の私だけが聞く事のできる会話…!!しかも赤司様の一人称が"俺"!それに呼び捨てではなく名字呼び…!なんとも幸せな状況下にいる私は有頂天にいた。



「いきなりすいません。私はただ、キセキの世代のみなさんの大ファンなだけです。」



いくら何度も私は見ているからって、お互いが知り合いなわけじゃない。友達でも、家族でもなんでもない、私たちはお互い今初めて会った、初対面なのだから。私は腰を低めにして丁寧にお辞儀をしてから笑った。
するとそんな私の言動に恐怖心はなくなったのか、張りつめた緊張の空気はなくなり少しだけみんなの表情もやわらかくなった気がした。そして私は一人一人の顔を見ながら名前を呼んだ。



「赤司くんに黄瀬くん、緑間くんに青峰くん、紫原くんとさつきちゃん。それから…黒子テツヤくん。ね?」



また引かれるかと思ったけど、どうやらもう慣れたらしい。あまり驚いた表情を見せずに私を凝視した。




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