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 独占欲の強い友人の場合

新臨です。
鏡のトランプ、シオンさんの静誕小説、九十九屋真一の場合に異常なくらいにたぎってしまったので…つい。







「俺の写真?え、欲しいの?」
「なんか今臨也の写真集作るのが流行ってるんだって!」
「……どこの世界で?」
「池袋で!」

こいつあたまおかしいのかな?が第一だった。でも俺が言ってもきっと通じないから後で運び屋に気を付けるように伝えておいてやろう。

「………」
「治療中の君の写真を撮れるのなんて私くらいだろう!イイセンいくと思うんだよねー♪」
「俺今日は怪我してないんだけど」
「振りでいいよ振りで。ほら上脱いで」
「………」

俺は…、わりと客観的に見て自分が変な奴だとかはた迷惑な奴だとかそういった印象を受けている自覚はあるんだけど、こいつも相当だと思う。だからお互いにお互いしか友達が居ないんだろう。
怪訝に思いながらも促されるままに服を脱いで、先日治療してもらった左腕を差し出す。

「……治療しながらどうやって写真とるつもりなの?」
「今のビデオはすごいんだよ!映像を後から写真に出来るんだ!」
「…まぁいいけど。」
「完成したら君にも見せてあげるよ、楽しみにしててねっ」
「遠慮しておくよ。自分の写真集なんて見たくない。」

ずいぶん楽しそうだな…こうも嬉々とした顔を自分に向けられるのは久し振りな気がする。大人しく治療を受けている振りをして、たまにカメラに向かってポーズをとって怒られる。
はいお疲れ!と包帯を外されたので服を着ると今度は隣に座ってカメラを構えられた。

「臨也臨也っ」
「次はなに?」
「目、瞑って」
「………はい。」
「キスしていいかい?」
「断る。あとはどんな写真が欲しいのさ、はやく終わらせてよ」
「つまんないなぁ。あ、ダメだよ、今日は帰さない。うちにお泊まりする臨也撮るんだー♪」
「セルティは仕事か?」
「うん!だから恥ずかしがらないでいいよ」
「いや俺なにも用意してないし」
「下着とパジャマと歯ブラシならある」
「……んなもん作ってどうすんだよ…」
「俺の臨也が一番だなって自画自賛する。」
「意味わかんない」
「お礼に俺の写真集作ってくれてもいいよ!セルティにあげるからちょうだいねっ」
「…………カメラ取りに帰らなきゃじゃん。あとパソコン」
「これ使えばいいじゃないか」
「それじゃお前が撮ってる間撮れないだろ。」
「ああ本当だ!なら仕方ないね、タクシーを呼ぼう!」
「うん。………ねぇ、目ぇ開けてもいいの?」
「あっ忘れてた、はいちーず」

かしゃっ

「いいよー」
「ねぇ、アルバム作りたいなら、ついでに中学からの写真持ってこようか?そんなにはないと思うけど」
「素晴らしいね!僕も探しておくよ!」
「………ほんと、お前って変なやつだよな…」
「臨也にだけは言われたくないなー」

ふふんと鼻歌を歌って新羅が携帯電話を操作する。そういえばお泊まりなんて久し振りだな、何の話をしようか。

タクシーが来るまでの間、珍しく恋人以外の話を楽しそうにする友人に、懐かしい感情がほんのりと再熱するような気がした。

変なこと言い出すくらい疲れてるなら、たまには惚気を聞いてやってもいいかもしれない。
好きな人のことを話してるときの顔が、いちばん好きみたい―…なんて。

本人に言うと面倒だから、呑み込んでコートを羽織る。

(そんな馬鹿みたいなこと、自分だけが知っていれば十分だ。)







臨也は全く信じていない様子だったけど、今池袋では臨也の写真集を作ってクオリティを競うっていうプライバシーの侵害も甚だしいイベントが流行している。
写真集はセルティが所属しているダラーズのようにパスワード制の掲示板で閲覧出来るんだけど、どうやっているのか画像保存はもちろん写真を撮ろうとしても真っ黒なディスプレイが写し出されるだけだった。

特に掲示板でハイレベルな争いを繰り広げている二人の製作者による臨也の写真集は目を見張るものだった。被写体がいいっていうのはあるだろうけど、選ぶ写真に嗜好が反映されていて臨也への感情が駄々漏れだ。

でも、いくらログを遡ってみても、どれもが臨也が認知していないであろう盗撮写真だけだった。
ってことはつまり、臨也はこの写真を撮った人間のことなんて欠片も愛していないんだろうなぁ…なんて。

「んー…やっぱりお前、首なしに作ってもらえよ。あいつと居るときが一番お前らしい」
「セルティは僕の全てだからねぇ。でも臨也と居るときの僕だって、臨也と居るときの僕らしいから問題ない」
「まぁそれもそうだけどさ。」

カメラを構えながら、臨也が目を細める。臨也がカメラを撮りに帰った理由がよく分かった。この瞬間の臨也は、確実に自分だけを見ていて、そこはかとなく愛しい。君がこうしてくれるのは、させてくれるのは僕だけだよね。純粋な優越感を感じてレンズに映る臨也に笑いかける。

「やっぱり完成したらいっしょに見ようよ。」
「…そうだな、どの写真選ぶのか気になるし」
「とりあえず俺が砂糖と塩をすり替えた紅茶を飲んだときのひどい顔は決定だね」
「じゃあ俺も砂糖と塩を間違えた言い訳をしてるときの必死な顔は入れることにするな」
「ちょっと臨也撮りすぎじゃない?ほんと俺のこと好きなんだからー♪」
「……言ってろ変態」

ほら、否定しない。
そう言ってからかってみても否定するのも面倒だと手を振るだけでやっぱり否定はしない。ああ君って本当に……もう、どうしようもない。

「さっきセルティと居るときが俺らしいって言ったけどさ」
「んー…」
「臨也はどんなときでも臨也らしいけど、俺といるときが一番可愛いよ」
「……はやく寝なよ、たぶん寝不足だ。」
「君も眠そう……おやすみ、臨也」
「おやすみ、新羅」

目を瞑った臨也に、隠すこともなくカメラを向ける。きっと気配で気付いてるのに止めようともしない臨也に、言い様のない感情が溢れてくる。

どれだけ君が愛されていようと、君が愛してくれるのはきっと―…だなんて

しつこいとカメラを叩き落とした臨也に謝罪して、同じ布団に潜り込んで眠りに落ちた。


(こんなかわいい君、俺だけが知っていれば十分だよ)



end

つまるところただの両想いに他なりません。



2012/3/28

友情恋情愛情とかそういうのがないまぜになった新臨が好きです。

シオンさんに捧げます。勝手に。



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