バイバイダーリン、ハローハニー
静臨喧嘩からの正臨です。
鏡のトランプ、シオンさんがシズちゃん視点書いて下さいました!萌え!シオンさん結婚して!「
ハローハニー、グッバイゲスヤロウ」
なんでわかってくれないの、こんなにわかりやすいのに。
「だいっきらい、出て行って」
「ああ!俺だってテメェなんざ、……ッ」
大きなくまのぬいぐるみは後輩で部下の男の子からもらったもの。意地になって取ったんですけど置き場がなくてとか、あんたの部屋無駄に広いからとかなぜか口を尖らせる真っ赤な顔はとても可愛かった。
ぎゅっと抱き締めて睨みつけると彼は下品な舌打ちを残して去っていった。
床いっぱいに食器だったものが散らばる。食事だったものも、グラスだったものも。
全部揃えようと思ったらいくらになるだろう。そんなことは、どうでもいいのだけれど。
喧嘩をした。
はっきりと言い切れる。
『俺は悪くない』
シズちゃんがヴァローナに貰ったと革のキーホルダーを自慢げに見せてくるから寝室からこの可愛いくまさんを持ってきて自慢仕返してやっただけだ。ふざけるなプレゼントなんざ受け取ってんじゃねぇこの×××!まさかお前からそんな罵声を浴びせられる日が来るとは思わなかったよ死ねと全力で蹴りかましたことを後悔する日は一生来ないと信じてもいない神に誓える。
だってだってだって、ひどいじゃないか同じじゃないか。俺があげたライターは趣味が悪いって家に起きっぱなしな癖に可愛い女の子にもらったキーホルダーはいつも使う携帯につけて喜んでるなんて、俺が女の子なら浮気だって喚き倒しても文句言えないだろう?女の子からの贈り物がないから、可愛い後輩がくれたプレゼントで対抗するくらい、可愛いと思ってくれたっていいじゃないか。いいに決まってる、あんなひどいこと、言われるなんて絶対におかしい。
喧嘩の発端とも言える大きなくまさんにねぇひどいよねと縋ってみる。そうだよ、悪くないよと真っ黒の目が慰めてくれてる気がしてぽろぽろ抑えてたはずの涙がこぼれてきた。
哀しくなってくる。俺はただ、ちょっと後輩に好かれてるからって調子に乗ってるシズちゃんの鼻を挫いてやりたかっただけなのに。なんでこんなことになるの、俺も同じように言い返してたらよかったの?
大嫌い、なんて、
すぐに頭の中で再生できるくらいに何回だって聞いたのに、何回だって言ったのに、出て行くことなんてなかったじゃないか。お前はほんとに口が減らないなって口を塞いでくれたじゃないか。したくないくらい、嫌だったの、そんな簡単に俺を捨てれたの?
全部が辛くて、痛くて、痛くて、このままくまさんの胸で窒息死したいくらいで、もう自分の全部が今までの全部が信じられなくて、ああぜんぶ君のせいだ。そんなわけない可愛いくまさんにナイフを振りかざして、
ぎしりと玄関から何かが軋む音がする。察するにシズちゃんが壊したドアを踏みつける音だ。
「げ…なんすかこの部屋」
「……きだくん、」
ふにゃ、と力が抜けたのはナイフを握り締めた手だけじゃなくて、同時にゆるんだ涙腺は、もう自分じゃ締めれない。
「また痴話喧嘩っすか…。片付けるの俺なんだからいい加減散らかすのやめて」
「紀田君、」
呆れたように言う紀田君の言葉を遮って腕を掴む。せっかくくれたくまさんに、ひどいことしようとしてごめんなさい。
「俺と付き合って。」
それは八つ当たりに近くて、喧嘩の一因となったくまさんをくれた紀田君を困らせたくなった。ひどい話だ。紀田君はなにも悪くないのに、謝るのは俺なのに。俯く俺に合わせてしゃがんで紀田君が口を開く。いつもみたいに何を馬鹿なことをと軽蔑してくれればいい。自分だって、こんな自分が滑稽で、泣きたくなるくらいには情けない。
「いいですよ。」
「………えっ?」
「だから、いいですよって。」
想定と違う答えにばっと顔を上げると、思っていたのとぜんぜん違う、嬉しそうな、笑顔。
「今から恋人同士ですね、臨也さん」
「へっ?」
底抜けに明るい声で言って、紀田君が俺を抱き締める。え、えっ?
理解の追いつかない俺のことを置いてけぼりに嬉々とした紀田君は携帯をカチカチ操作して耳に当てる。
「波江さん、臨也さんと付き合うことになりましたっ」
「えっ!?」
「はい、ありがとうございます。じゃあまたっ」
「ちょっ、紀田君きみなに言っ」「正臣」
「へ…?」
「正臣、って…呼んでくれると嬉しいです。」
「ま、正臣、くん……?」
「………えへへ」
「っ……」
宣言通り、本当に嬉しそうに紀田君が笑う。
さっきシズちゃんと喧嘩して泣きそうになったばっかりなのに、いったい何が……
じわりじわりと心臓から順番に全身があったかくなってくる。どうしよう、どうなったの、あれ、よくわからないけど。
「正臣君が、恋人……?」
「はい、よろしくお願いします」
「っー……!」
衝撃的過ぎる展開に、頭が真っ白になってしまって、自分から言ったくせに紀田く……正臣君の頭がおかしくなったんじゃと本気で心配になってきた。
でも正臣くんは本当に嬉しそうで、傷心の俺にはなんだかきらきらして見えて、なんていうかあの、えっと
「よろしく、お願い…します?」
「はいっ」
(………正臣君が嬉しそうだから、まあいっか…。)
end
臨也さんの中では部屋から出て行った時点でシズちゃんは臨也さんに別れを告げたことになっています。
おまけはシズちゃん対正臣くん。
おまけ
「へ、やややだ、やだよ恥ずかしい…っ」
「普段のあんたのが100倍は恥ずかしいから大丈夫ですって。」
「う、うでくんで街歩くとかシズちゃんとラブラブのときでもしたことないよ…っ」
「平和島静雄って変わってますね。こんなかわいい恋人自慢しないなんて」
「っっか、からかわないで…っ」
「えー?」
「っ臨也テメェ、どういうつも」
「まままままさおみくん…!所かまわず腕組むのやめてってば、シズちゃんいるだろっ」
「えー?俺元カレとか気にしない派なんで大丈夫っすよ」
「誰が元…だ、ぶっ殺されてぇか、ああ?」
「そんなんだから臨也さんに振られたってわかんねーの?」
「正臣君恥ずかしいから……!」
「「………」」
「臨也嫌がってんだろうが、離せ」
「臨也さん嫌がってんでしょ、俺の可愛い恋人見ないでください。」
「正臣君ってば……!み、みみがとけちゃう…っ」
「「…………」」
「いやもうほんとに見ないでくれません?臨也さんまじ天使でしかねえ」
「て、めっ俺んときにンな顔したことねぇのに…っ」
「し、シズちゃんこんな頭おかしいことしなかったし言わなかったじゃないかっ!正臣君だ、だめだって…っ元カレとか関係なく人前だから…っ」
「元カレじゃねぇよ!何勝手に別れてんだテメェは!!」
「は?シズちゃんがキスするのも嫌だって言ったんだろ」
「言ってねえよ!」
「臨也さん、俺キスしたい」
「正臣君はだまって…っばかっ」
「…………えへ」
「つうかなんで名前呼びになってんだよ!!」
「正臣君が嬉しいって言うから…」
「嬉しいです臨也さん、臨也さんが俺のこと呼んでくれるならなんでも嬉しいんですけどね」
「っ、あ、あたまおかしい…っ」
「…………っっ」
おまけ・おわり
すぐに謝罪しないからこんなことになるんだよーっだ。
いつだったかシオンさんが疲れてるときに臨也さんに捨てられるシズちゃんが欲しいとか譫言で言ってたような気がしました。
てことでシオンさんに捧げます。シオンさんらーぶっ
2012/3/1
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