*『眉目秀麗の定義とは。』のせいはちゃんから頂いた「『バイバイダーリン、ハローハニー』」にたぎって続きを書いてみました!(イメージはシズちゃん視点)













臨也と喧嘩した。喧嘩といっても正直とてつもなくしょうもない。まるで餓鬼の喧嘩のような見栄と意地の張り合いだ。俺としては臨也に嫉妬して欲しくて、ヴァローナから貰ったストラップを見せ付けた。パッと見、いいものに見えるそれが実は商店街のくじ引きの景品で、かつ五等以下のものだったことは知っている。甘味を食したかった。と、一等の有名ホテルのデザートバイキングのことについて延々と恨みがましげにあいつが語っていたから恐らくそうだろう。だからこのストラップになんら好意の塊だなんてものは含まれていない。現にあいつは目の前に居た俺に、『私には不要です。甘味こそが今の私にとって最も摂取しなければならないものです』と拗ねたように渡してきたのだから尚更だ。

なら、なんでそのストラップをわざわざ携帯につけてみたのかと聞かれれば、ただ臨也を苛めたかったからの一言に尽きる。あいつは虐めれば虐める程可愛い反応をするし、この前同僚からもらったハンカチにもかなりの嫉妬をしていた。なんで俺があげたライターは使ってくれないのにそのハンカチは大事に使うんだよって泣きだして、まぁなんというかとてつもなく可愛かった。

そんな臨也のいうライターは大事に俺の机にしまっている。シンプルな形だ。別に悪趣味というわけでもない。なら、なぜ身につけないのかと聞かれれば単純に俺のモノ遣いの荒さがまず問題だった。幽がくれたものですらちょっとした拍子に壊してしまうこともある。あいつは律儀だから俺の性格を汲み取って、どれだけ壊してもいいようにと同じものを大量に送ってくるが、代わりがあっても罪悪感は拭えないものだ。壊してしまった。代わりのないものだったら尚更壊れただけじゃすまない。それが臨也がくれたライターみたいに何かの記念日に、それも一つしかないものだとなると身につけるのにかなりのハードルが高くなる。壊したらどうしよう。壊れた時にどう言おう。それが先行してしまって身につけるのを戸惑ってしまう。そんな俺の弱さ。それが結局臨也にあらぬ疑いを抱かせていることには気が付いている。けれども、それもまた可愛さ故に放置してしまっている自分が居るのだから、俺はとことん最低な男だと思う。不安がりのあいつはかわいい。俺のことになると必死になり過ぎていろんなことに目も意識も回らなくなるあいつが。とてもかわいい。




「っつーのによ、」



携帯灰皿に煙草を押しつけ、舌を打つ。あのストラップだってかわいい顔が見れるかもと思ってやっただけなのに、まさかあの場にあいつが変なぬいぐるみを嬉しそうに持ちだしてくるとは思っていなかった。そもそもなんなんだ、あのくまのぬいぐるみは。臨也の照れ顔にオプションとしてはあまりにもばっちりで、本当に、腹の底から腹立たしい。あれをあげたのは後輩であたる部下とか言っていたが、その部下といえば紀田の野郎じゃないか。あれは絶対に下心があるに決まっている。そもそも、あいつ自体が気にくわねぇ。



「あー、むかつく。むかつくむかつく……」



臨也を喜ばすのも、不安にさせるのも、照れさせるのも。全部が全部俺の特権だってぇのに、なんなんだ。

臨也のあのぬいぐるみを抱きしめて嬉しそうに笑う顔を思い出す度に、無駄に苛々する。その苛々に任してガコンと傍にあった路上のごみ箱を蹴ったら見事に遥か先まで飛んで行った。どこに着地するのかしらないが、ごみ箱が一つ増えると思えばむしろ問題はないだろう。むしろもっと他に蹴り応えのあるものはないかと周りを見渡していれば横から溜息が一つと、興奮した声が一つ飛んできた。



「どうした、静雄。今日はいつになく荒れてんなぁ」

「先輩も甘味不足ですか?著しい糖分欠如は身体に多大なる被害を与えます。故に今すぐにでも甘味を摂取しに行くことを奨めます」

「まぁ、こんだけ静雄が荒れてちゃ仕事はできねぇしな……。どうだ、静雄。ヴァローナの言うようにちょっと休憩にしねぇか。ほら、そこらにできた店、行ってみたいって言ってたろ」



トムさん。今日に限っては俺、甘いの食べても苛々が収まる気がしねぇっす。なんて言えるわけもなく。むしろ仕事中にあるにも関わらず、私事で苛々して迷惑かけているのもこっちなのだから申し訳ないと思わないはずもなく。

けれども苛々は収まらなくて、あぁ臨也を泣かしたいなと心からそう思う。可愛い顔を見れば少しはこの苛立ちも治るかもしれない。よし、今から新宿まで殴りに行こうか。いや、むしろ。



「どうする?」

「トムさん、俺行きたいところが……」

「ん?」

「ちょっとそこのゲーセ……」



とある名案を思いついて、その旨を告げようとした時だった。なぜだかここで見てはいけないものを見てしまった気がして言葉が詰まる。トムさんの更に奥。そしてヴァローナのそのもっと奥。そこに金色の頭と、黒コートの野郎が並んでいるように見えるのは気のせいだろうか。俺は思わず自分の目を疑った。目を擦ってみる。一度や二度じゃない。しっかりと自分の目を擦ってもう一度、見てしまった方向へ目を向ける。ちなみに俺の視力はかなりいい。だから見間違いなんてものはありえないと分かっている。けれども、見間違いであって欲しかった。その光景を見て、俺は唖然とした。



「――ちょっと待て、コラァ!!!なんで紀田の野郎なんかと腕組んで歩いてるんだ!!」
















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せいはちゃんへ!
私のしょうもない発言覚えてくれててありがとうー^^
臨也に振られるシズちゃん正義(笑)
あまりにもたぎったんでシズちゃん視点でプレゼント返しさせて頂きますっ!!
せいはちゃん、らーぶちゅちゅっ(//ω艸*)




12,03,02(FRI)


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