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 Happy Birthday!


紀田くんお誕生日おめでとう(*^□^*)

臨也さんを好きだけど言えてない紀田くんと、察してるけど聞けてない臨也さんです。





『紀田くん、今日ちょっと時間作ってくれない?君の都合のいい時間に、十分ー…いや五分でいいから。指定してくれれば会いに行くし、顔をみれるだけでもいいから』

会いたいんだけど



なんて、誕生日に好きな人に電話なんかされたら、予定なんてあってないようなもんでしょうが。

「えっ来たの?」
「別に、予定もなかったし」
「いやびっしりだったよね?帝人くんたちと、ドタチンたちと、黄巾族の子たちと、あとほかにも一日引っ張りだこだったように思うけど…」
「だから、それが全部終わってからは予定なかったんで」
「えっ終わったの!?まだ3時にもなってないよ?」
「……アンタが、時間作れって言うから来たんですけど」
「あ、ああそうだね。ありがとう。まさかうちに来てくれるなんて思わなかったからさ、びっくりしちゃったよ」
「………」

ポーカーフェイスを気取ってるつもりなのかな。引き攣らせても綺麗な顔に、ほんのりと朱が差している。

(……うれしそう)

あと、緊張してるようにも見える。これが誕生日マジックなら俺は永遠に魔法にかけられていたい。

「えっと、さ。紀田くんにはいろいろお世話になってるからね。面白いものもみせてもらったし、うん。生まれた日に、プレゼントくらい渡しておいた方がいいかなってね」
「………」

わざわざ自分に都合の悪いことを口にするのは照れ隠しのつもりなんだろうか。そういうの、可愛いから勘弁してほしい。

「なにくれるんですか?」
「き、紀田くんが喜ぶ…もの……」
「?」

そりゃあ、アンタがくれるならたぶんだけど大抵のものは喜びますよ。使い差しのボールペンや、一杯の紅茶だってそれが俺のために用意してくれたなら宝物になる。

「……え?」
「な、なに」
「あ、いや、え?」

レザーの黒い長財布を開けて臨也さんが戸惑うような顔をする。
いやいやいや、なんでもいいとは言ったけど、いや言ってはないけど。現金、はいくらなんでもないだろう。

親兄弟ならまだしも、好きな人に現金もらって喜ぶような奴だと思われてるのか俺は……!

「あっお金じゃないんですね」
「えっ紀田くんお金がほしいの?!」
「や、財布出すから……なんて断ろうか悩んでました。」
「……断るくらいなら、受け取ってから捨ててほしいなぁ」
「アンタからもらったものはレシートだって捨てれませんよ」
「今日の紀田くん、なんかおかしくない…?」
「誕生日なんで。」

ちょっとくらい、強気になってもいいかなって。

臨也さんの言葉に、動作に、期待できる自分がいる。

「……これ」
「?」
「時間あるときに、受け取りに行って。」
「えっ?」

差し出されたカードには『紀田正臣様』と店名らしきアルファベットが書かれていて、受け取って裏返してみても特になんのヒントも見受けられない。

「なんなんですか?」
「行けばわかるよ。」
「………」

さすが臨也さん。
俺なんかの予想じゃ掠りもしない。

ネットか電話帳で出てきたらいいな…無理なら臨也さんの行動を遡らなければならない。

「お店なんだけど、地図いま印刷するから待ってね」
「えっ」
「えっ、なに?」
「や、場所、自分で搜せってことだと…」
「紀田くんは俺をなんだと思ってるの…?」

出先だったら荷物になるだろうから預けてただけだよ、とプリンターを作動させる臨也さんはちょっとむっとしてる。

「臨也さんのプレゼントだから、多少の苦労しないとだめかなと思って」
「……まぁ、それでも取りに行こうとしてくれる気持ちは嬉し―…汲んであげないこともないけどさ」
「……今日の臨也さん、いつにもまして可愛いですね。」
「かっ……ば、ばかじゃないの。いくつ年上だと思ってるの馬鹿じゃないの」
「臨也さんは多分、三十路になっても可愛いですよ。」
「っ、き、きだくんに言われても嬉しくないよ」
「…………」

ぽこぽこ、熱が湯気になるのが見えるようだ。かわいい、ちょうかわいい抱き締めたい。

「でも、かわいい」
「っ、ひゃ…」

ちゅ、と少し高い位置にある頬にキスする。印刷するためにゆるく腰掛けただけの椅子に沈んで指の先まで赤くする臨也さんに、予定を終わらせてきた自分を称賛した。

すき、すき、だいすき

額、鼻先、耳、

囁くつもりで捧げるキスで、自分の想いが伝わればいい。

「臨也さん、ありがとうございます。うれしい」
「まだ、なにかわかってないのになにいってるの」
「アンタが俺のために用意してくれたことが、それだけで舞い上がれるくらい嬉しいんですよ。」

素直な言葉を音にすると、かわいい臨也さんがもっと可愛くなる。臨也さんを可愛くしてるのが自分だと思うと、なんかもう今すぐ血を吐きそうな気持ちになってくる。

「好きです。大好きです。ねぇ臨也さん、プレゼント、本当にこれ以上ないってくらい嬉しいです。でも」


「俺、臨也さんもほしいな」

にっこり笑って臨也さんが好きそうな甘える声で。

早すぎる否定と沈黙は肯定だと、臨也さんが言ってたんでしたよね。

(ちゃんと来年、お礼しますからね)


もちろん給料3ヶ月分と、
ありったけの愛を詰め込んで



end


2013/06/21

遅刻しちゃいました。




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