知り合いのそっくりさんと同居を始めて一週間




「津軽島君」

「ん?」

「ん?じゃない」


「お菓子はひとりひとつだけって言ってるだろ!」

「「!」」


「なんでサイケまで驚くんだ、お前にはついさっきも言っただろうが」


そっくりさんはちょっと厳しくなっていた






「う…プリン…!」

「わらびもち…」

「シュークリームとイチゴ大福があるんだから文句言わない。」

「「………」」

「そんな目しても駄目だよ、次やったらチャット謹慎って波江に言われてるんだから」

「臨也君は俺よりチャットが大事なの」

「サイケは俺よりプリンが大事なの?」

「っ…!臨也君のが好き!」

「………ありがと、俺もサイケのが大事。サイケと居るときはチャットしないだろ?」

「うんっ」


よしよしと臨也がサイケの頭を撫でる。この一週間でふたりは仲良くなった。

本当に仲良くなった

例えばいってらっしゃいとおかえりなさいのハグが定着化したり

いつのまにかいっしょの布団で寝ていたり(夜中にサイケが潜り込んでるらしい)

ふたりでくっついてひとつの雑誌(なぜか女の子向けの)見たり


同じ顔のふたりがきゃっきゃと笑っているのは微笑ましいし、臨也が楽しそうだとなんか和む



臨也にあったのは俺の方が先なのに、サイケばっかり臨也にベタベタしてなんとなく面白くない、とも思う



「どうしたの津軽島君、荷物手伝おうか」

「……いやいい。」

「津軽島君は紳士だね」

「津軽は力持ちだもんね俺のことも片手で持ち上げられるんだよ」

「へーますますシズちゃん」

「っ……」


くすくすと臨也が笑う

唯一、臨也の嫌いなところ


俺が何かをすると、ことあるごとにその名前を口にするところ

会ったこともない『シズちゃん』が俺は嫌いだ

『シズちゃん』の話をするときの臨也は悪態ばかりつくわりにいつも以上に楽しそうな可愛い顔をする

それで切なそうな顔で『シズちゃんは俺にこんな事してくれない』と笑う


心臓が痛くなる


『シズちゃん』を嫌いなのはサイケも同じみたいで、その名前が出ると俺と違って素直に嫌な顔をする


「津軽のが力強いよ」

「かもしれないね」

「津軽は俺と臨也君ふたりでも持ち上げれるよ!」

「そうなの?」

「…やってみるか」

「………家でね」

ちら、と俺の目を見てはにかむように臨也が笑う

ああ、かわいい…


「……臨也やっぱり荷物頼む」

「?いいけど。はい」

す、と差し出した手に荷物を渡して、空いた手で臨也を撫でる

不思議そうに首を傾げながら、目が次第に細められる

意外と、臨也は触られるのが好きらしい

だからすぐにくっつくサイケに絆されてるのかも、と思いもするが俺にはサイケみたいに、その…ベタベタ甘えるとかは出来ないし

これくらいしか、触れない

「お前可愛いよな…」

「それはどうも」

「荷物、ありがとな」

「っ…これだけのために荷物?」

「おう」


「………津軽島君格好良すぎるだろ…」


ぼそ、と小さく臨也が呟く

俯いてふいと顔を背ける姿にほわほわなんかあったかくなる


(かっこいい、いわれた)



はやく抱き上げたくて、心なしか家に向かう足が速くなる気がした



end

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