車内でおしゃべり



「紀田くん、お待たせ。」

「…………えっっ?」

「ん?」

「臨也さん運転できたんすね…乗りたくねー」

「あは!ペーパーじゃないから大丈夫。白スーツ着たお得意様の車運転できるくらいにはうまいよ」

「すごくいやな尺度ですね……」

「紀田くんを助手席に乗せることになるとはね…緊張するなぁ」

「は、どの口が。駅で待ち合わせって言うから電車で行くんだと思ってました。」

「電車って面倒じゃない?紀田くん可愛いから女の子に目ぇつけられちゃうかもしれないし」

「顔だけならあんたも悪くないでしょ」

「言うねぇ…まぁとにかく乗りなって。」

がちゃ

ぽすん

ぱたん


「よく運転するんですか?」

「いや…どうかな、必要があればするけど…最近は波江さんも居るしね。紀田くんも免許とったらこれ使っていいよ」

「……車よりバイク乗りたいです。中型くらいの」

「それいいね。後ろ俺の指定席にしてくれるならお金出してあげるよ」

「遠慮します。」

「ふふ、まぁそうだろうね」

「……お金出してくれなくても、たまにだったら乗せてあげますよ」

「ほんとに?嬉しいなぁ!俺バイクの後ろって好きなんだよね」

「どうでもいいです。平和島静雄って、バイク乗れるんですか?なんかすごい様になりますよね…」

「男の敵だよね。免許は持ってなかったんじゃないかなぁ…シズちゃんなんか自転車で十分だよ」

「自転車でスポーツカーレベルの速度出せそうですよね」

「さすが紀田くんあれは警察に捕まればいい速度だった。」

「やっぱり…」

「昔一回だけね、シズちゃんの自転車の後ろに乗ったことあるんだけどさ」

「………へぇ」

「なんでだったかなぁ…無理矢理乗ったことは確かなんだけど……」

「よく振り落とされなかったですね」

「あはは、それが振り落とされちゃったんだよね」

「えっ?」

「それはそれは勢いよく。やばい死ぬ、ってとこでドタチンが助けてくれてさ」

「……どこかにぶつけてたらもう少しまともになれたかもしれないのに…残念でしたね」

「もうちょっとつつみ隠してもいいと思うんだけど。それ以来どうやってもシズちゃん乗せてくれないからさ」


にこ


「紀田くんが免許とるの期待してる」

「………気が向いたらですからね。」

「うん。気が向かないときには紀田くんの個人情報ちらつかせて考え直してもらうから別にいいよ」

「しね。」

「ひっどいなぁ…あ、このお茶紀田くんのだから飲んでいいよ」

「…無駄に気がつくとこもいらっときますよね」

「素直に気が利きますねって誉めてくれればいいのに。」

「は、甘楽ちゃんやってくれたら考えてあげてもいいですよ」

「「………」」

「……言ったね」

「え」

「(こほん)」


「バキュラさんってば甘楽にばっかり意地悪なんですからぁ!たまには優しくしてくれないと甘楽泣いちゃいますからねっ!」

「ぶっ!」

「きゃっ!バキュラさん大丈夫ですかぁ?車汚したら嫌ですよぉ?」

「ごほっごほっ」

「…大丈夫?はいティッシュ。」

とんとん

「もう、自分から言ったくせにひどいなぁ」

「まっまさかやると思わないでしょうが!こほ、頭おかしいんじゃないですか!」

「失礼な。せっかく可愛い部下と親交を深めようと慣れないことしてあげたっていうのに頭おかしいはないんじゃない?」

「だからって……けほ、こほ」

「紀田くんって意外とメンタル弱いよね、色んな意味で。」

「あんたと対峙してたら誰でもこうなりますよ…」

「シズちゃんはなんないよ?」

「…平和島静雄にこんなことしてんすか……?」

「いやしてないけど…」

「ああそれはよかった…いくらなんでもこれはないですよね…首絞められても文句言えませんもんね」

「どういう意味かな」

「………可愛すぎてみてらんないですから。目の毒です。ああ耳にも。ただでさえ可愛い臨也さんが可愛い声つくってんだからまぁ当然と言えば当然ですけど」

「え?」

「…………」

「「…………」」

「……誉めてますよ?」

「いや、え?」

「だから、甘楽ちゃん可愛かったです」

「っ……(カアアアア」

「あと今みたいに背中叩いてくれたり、臨也さんって外見がいいだけじゃなくて気も利きますよね」

「なにこれこわい…」

「臨也さんが素直に誉めろっつうから」

「ああああいいですもういいですやめてください」

「なんで敬語なんすか。事故んないでくださいね」

「事故ったとしたら紀田くんのせいだよね。」

「顔赤いですよ」

「うるさいな。そういうこと言われなれてないんだよ」

「ふうん…平和島静雄とかにも言われないんすか?恋人なんでしょ?」

「わかってるくせにそういうこと聞かないでよ」

「………ねぇ臨也さん」

「なに」

じっ

「平和島静雄に言われたとき困らないように、慣れるまで言ってあげましょっか?」

「………いらないよ。役に立たないから」

ぴくっ

「役に立たない、って」

「たたないよ」

「……そりゃあ、俺に言われたんと恋人に言われたんとじゃ破壊力は違うでしょうけど………耐性、くらいはつくかもしれないじゃないですか」

「だから、耐性つけたところで役に立たないんだってば。あ、紀田くんだから役に立たないっていうんじゃないよ?ただほらシズちゃんそういうこと言わないからさ」

「………」

「まぁ紀田くんに言われなれたところでシズちゃんの耐性にはならないのも確かだけどね」

「…平和島静雄格好いいですもんね」

「………紀田くんも格好いいよ」

「…………」

「…………」

「……え?」

「優しいし、頼りになるし、シズちゃんなんか目じゃないよ」

「えっ…えっ、なっ…なにいっ…!!(カアア」

「ふ、耳まで赤いよ紀田くん」

「っ……からかわないで下さい」

ぷいっ

「やられたらやり返せ、だからね。拗ねない拗ねない」

ぽんぽん

「ーっ…!」

「紀田くんはほんとかわいいなぁ」


「♪」

「…………」


「…可愛いのはどっちだよ」

「ん?」

「いえ。あー、はやくつかないかな。空いてたらいいですね」

「あ、そうだ。紀田くんにお願いがあるんだけど」

「なんすか?」

「俺さ、なんだかんだでちゃんとシズちゃんと恋人同士なんだよね。」

「……知ってます…よ」

「それはよかった。だから浮気とか、シズちゃんを裏切るようなことしたくないんだ」

「……いい心掛けっすね…」

「だろ?でも俺、付き合うのって初めてだからどこからが浮気かわかんなくてさ。よくわかんないんだ、何が浮気で何が浮気じゃないかとか、ぜんぜん」

「………」

「基本はシズちゃんがやってることを基準にしてるんだけどさ、シズちゃんの行動全部把握できてるわけじゃないし……だから、もし俺が浮気とかそれっぽいことしたら注意してほしいんだ。まぁ浮気みたいなことになってたら普通に紀田くんも不愉快だろうしさ」

「……紀田くん?」

「えっ」

「………聞いてた?」

「えっ、あっ、もちろん!」

「………ほんとに?」

「あ、あれですよね、えっと、臨也さんが可愛すぎたら注意したらいいんですよね?」

「はい?」

「あああああじゃなくて!!!!……こほ、心配しないでも大丈夫ですよ、臨也さんは平和島静雄のこと好きなんでしょ?」

「…まぁ、うん」

「…………」

「……それ、他の人にも言われた。」

「……」

「やっぱり、そうなんだ…気持ちが大事なんだね」

「…たぶん」

「……悪いことしちゃったかも」

「?」

「なんかヴァローナにヤキモチ焼いてキレちゃった。もう仲直りしたんだけどね…これから気を付けよ」

「っそれはキレていいんですよ!」

ばんっ!
びくっ!

「え!?」

「あああもう、なんなんだよあいつ…!臨也さんがこんなに」

「………きだくん…?」

「言っときますけど!」

「!」

「もし俺が臨也さんの恋人になれたら仕事どころか町で臨也さんが誰かに笑っただけでヤキモチやくし邪魔しに行きますからね!」

「っ………」

「休みの日は全部俺のために空けてほしいし、休みじゃなくても毎日会いたいし、電話したいですからね!」

「え、なに紀田くん俺のこと好きなの…?」

はっ

「………んなわけ、ないでしょ。ただ、別にあんたがヤキモチやくのは恋人なら当然なんじゃないかなと、思った、だけで」

「「…………」」

「好きなら浮気じゃないんじゃないの?」

「浮気じゃなくても嫌なものは嫌でしょうが。恋人なんだから、浮気してるとかしてないとか関係なくちょっとくらいの我が儘いいじゃないですか」

「……紀田くん可愛い」

「っ、言うと思いましたよ!」

「あはっ!バレちゃった?」

「ワンパターンなんですよ…もう」

「はは、ひどいなぁ…」



「「…………」」

「……あ!アトラクション並んでたら嫌だし順番決めときましょうよ!」

「そうだね!」



((なにこれ気まずい…!))









「……やっぱ車運転できんのっていいっすよね」

「ん?おお、そうだな。静雄は免許とんねぇのか?」

「何回か受けたんすけど、教習の時点で…」

「あー…、まぁねぇとだめってもんでもねぇからなぁ」

「欲しいんすけどね、車なら落っこちることもねぇし…」

「はは、落っこちるってどこにだよ」

「いや、高校のときなんすけどね…ちょっと、気になる奴がいて」

「っ……!(ぴくっ」

「ほお、甘酸っぺぇ思い出ってやつか」

「それが…いきなり抱き付かれて、焦ってチャリ漕いだらそいつぶっ飛んじまって…」

「「………」」

「しかも、ぶっ飛んだそいつを他の男が助けて…お姫様だっこで……」

「静雄もういい。あー…あれだ、電車乗り継いで行くデートも悪くねぇぞ。うん。」

「こ、この国には交通機関多数存在を認めます。移動手段多種多様です。」

「まぁ、そうだよな…別に行きてぇとこもねぇしいいんすけど」

「はは、まぁ必要になったときはまた相談のってやるよ。」

「どもっす」

「で、ヴァローナいいのあったか?あんまりパンフばっか見てるとよっちまうぞ」

「愛らしいフォルムの遊具を発見しました、希望します」

ばっ

「おう」

「……可愛いな…」

「はい!」

「…………」


(……あいつこんなん好きそうだよな…)

(また、キレっかな…)


「…………」

「先輩?」

「…いや」


(まぁ、今回はこっちが先約だし大丈夫だろ)


「並んでねぇといいな」

「はい!」






「臨也さん臨也さんっ!見てくださいこれとか可愛いですよ」

「ほんとだ!わあ、宝石みたい。にゃーさんの形のもあるかな」

「ありそうですよ、猫の乗れたらいいですね」

「うんっ!ああ、楽しみだなぁ…!」

「ね!あっ、見えてきましたよ!」

「わあ、観覧車も可愛い!乗ろうねっ」

「はいっ!」

(臨也さんほんと可愛いなぁ…!)

(ぬいぐるみとか売ってたらいいなぁ…!)


end

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -