※学パロ 葉アンというよりは、葉+アンナに近いです。 「あら、どうしたの」 そんな情けない顔して。 悪戯っぽく笑ったアンナに、机へと突っ伏していた葉は顔をあげた。僅かに唇を尖らせたその表情には、拗ねたような気配が滲んでいる。 「ハオにフラれた」 「あら、そうなの」 「おう。生徒会集会だっつってな」 珍しい、とアンナは意外に思った。そこにあるのは純粋な驚きである。 葉の双子の兄でもあるハオは、自他共に認める弟好きだ。目に入れても痛くない程、彼は葉を可愛がって甘やかしている。彼自身も流石にマズイと思っている様子なのだが、いざ最愛の弟を目の前にすると自制が効かないらしい。 そんなハオが今回、葉からの誘いを断ったというのだ。 「あと、まん太とホロホロと蓮にもフラれたんよ。塾と部活だって」 「へぇ。今日はそういう日なんじゃないの」 ぶすくれながら続けた葉に答えながら、アンナは葉の前の席へと腰かけた。 淡々としたアンナの答えに、葉はうんざりとしながら溜息をつく。 「うへぇ…やっぱそうなんかなー…リゼルグとチョコラブもダメだったしなぁ」 「アンタ、いつもの天然タラシっぷりはどうしたのよ」 「なんだそりゃ」 ふは、と吹き出した葉に、アンナも小さく笑い返す。 葉は特に寂しがり屋という訳ではない。けれどいつも賑やかな面子に囲まれているおかげで、一人の空気にはどうにも馴染めないのだろう。普段から葉にべったりとくっついているハオもその一因だ。 「そう。なら、丁度いいわ。葉、少し付き合いなさい」 とん、と葉が突っ伏した机に頬杖をつき、アンナは口端を釣り上げた。 淡い色の瞳が楽しそうに細められる。 「あん?」 「だから、アタシがフラれてかわいそうなアンタに付き合ってあげるって言ってるのよ」 アンナの言葉に首を傾げていた葉は、それを聞くと小さくはにかんだ。ウエッヘッヘと、いつもの気が抜ける様な笑い声をあげる。 「おう、そうか。で、オイラはどこに付き合うんだ?」 「ここよ」 そう言いながらアンナが取り出したのは、最近できたらしい甘味処のチラシだ。 賑やかな配色で甘味の写真が並び、記事の端には商品の割引券がついている。 「本当はたまおと行こうと思ったんだけど、アタシもさっきフラれたのよ」 「なんだ、アンナもオイラとお揃いか」 「ええ。でも割引券の有効期限が今日までなの。だから付き合いなさい。アンタ、甘いもの好きでしょう」 「おう、甘いのは好きだぞ」 アンナの言葉に応えた葉は突っ伏していた机からゆるりと上体を起し、カバンを手に取った。 それを見たアンナも葉に倣って立ち上がる。二人連れ立って廊下を歩いていると、葉が不意に携帯を弄りだした。 「何してるのよ、アンタ」 「ん?ああ。ハオとか他の奴にもメールしとこうと思ってな」 「あら、アタシと二人は嫌だっていうの?失礼しちゃうわね」 「なっ、ち、違うんよ!?」 アンナが態と顔を顰めて歩調を早めると、背中から葉の慌てた声がする。 次いで、ぱたぱたと早足に駆け寄ってくる音がした。それに耳を傾けながら、アンナは淡々と告げる。 「アンタの奢りなら、許してあげてもいいわよ」 タイミングを見計らってアンナが隣へ並んだ葉に告げれば、困った様な声が柔らかく鼓膜を震わせた。 「うへぇ…オイラ今400円くらいしか持ってないぞ」 「じゃあ自分の分は諦めるのね」 「鬼かッ」 「アンタ、アタシにそんな口きいてもいいと思ってるの?」 「うぐっ……す、すいません」 アンナがじろりと葉を睨みつければ、案外素直に謝る。そんな葉の反応に、アンナは本人へと気づかれない様に口元を緩めた。その場に流れる沈黙は、酷く穏やかだ。葉はうーんと唸りながら、困ったように渋面を作っている。それが少し可笑しい。 「仕方ないわね、今回は許してあげるわ」 「お、おう」 「次は奢りなさいよ」 「……はい」 葉はしょぼんと肩を落としながらも、アンナの言葉に頷く。葉のそんな仕草にとうとう笑いを堪えきれなくなったアンナは、小さく吹き出した。 珍しいその反応に、葉はきょとんと瞳を瞬かせる。それでもアンナの笑い声は止まらない。 くすくすと気が済むまで笑い、アンナはちょんっと葉のワイシャツの裾を掴んで引っ張った。 「大丈夫、そんな高いもの頼みやしないわよ」 「………奢ってなんて嘘よ、ではないんだな」 「あら。アンタ、アタシの女としての価値がそんなに安いっていうの?」 「いや、だから。オイラ別に、アンナと二人が嫌とか言ってないだろ」 唇を尖らせながらぶーぶーと文句を言う葉に、アンナはそっと瞳を細める。 ワイシャツを掴んだままでも振り払われない指先が、酷く嬉しかった。 とろける指先 === 学パロな2人は、アンナさんが比較的普通の環境で育った設定なのでほのぼの色が強くなりました。あとやっぱりデレ率も高めです(笑) 2011.11.28 memoから格納/加筆修正 top |