※ミイラ男×狼男ハロウィンパロ きゅぅん、という甘えた鳴き声に、小さく口元が緩んだ。 「まるで犬みたいだね」。 そう言うと、自分のかわいい狼は拗ねて口をきいてくれなくなる。昨日も確か、それで怒らせた。否、一昨日だったか。溶けかけた意識は、うまく記憶を手繰れない。散漫に散らばった記憶の糸の断片は、眠気の淵にゆるゆると解けて消えていく。 ああ、でも、そうだ。拗ねた彼のふわふわの尻尾が、不満げに床に打ち付けられていたのは覚えている。膨らんだ頬とあの様が可愛くて、いつもついつい虐めてしまうのは、かわいい彼には内緒だ。 「―――おいで、おちびさん」 そう小さく囁いて掛布の縁を持ち上げると、ふわふわの毛並みが頬に触れた。くすぐったさに淡く微笑む。甘えて擦り寄ってくれるのは嬉しいが、かわいくてくすぐったくて眠れやしない。 「朝はまだ長いよ。お眠り」 そう告げて口づければ、きゅうんとまた甘い鳴き声が鼓膜を震わせた。 そんなに可愛く甘えないで欲しい。これでも、一応幼児に手は出すまいと我慢しているのだ。否、一応狼男の世界では立派な成人らしいのだが。1084歳の僕としては、些か気が引ける。その我慢がいつまでもつかは別として。一応。 毎日ブラッシングして一緒に食事をして、大事に大事に育ててきたかわいい僕のおちびさん。 もう、おちびさんと言える外見ではないけれど。つやつやとした亜麻色の綺麗な毛並みと、翡翠の瞳をした、僕の狼男。葉。 「―――夜になったら、また遊ぼう。ねえ、だから今はおやすみ。よう」 先日付けたばかりの、まだ唇に馴染まない彼の名前を呼ぶ。 とんだお笑い草だ。彼に「なぁ、オイラの名前ってなんなんだ?」と聞かれるまで、名前をつけていなかったことにすら気づかないなんて。 「はお」 首筋に埋められた丸い頭を抱き寄せて、なだらかな額にくちづける。 そうするとふわふわの尻尾が腰に絡んできた。暖かい。 「いい子だね。―――おやすみ」 囁いて、僕は今朝も暖かい塊を抱えて眠る。人の活動する昼は長い。 真夜中まであと少し 僕等の時間がくるまで、あと、数時間。 === ハロウィンパロの細かい設定考えてたら楽しすぎて困った。 2014.12.17 top |