※学パロ
ハオ葉ベースに、ハオさまとアンナさんの葉くんを巻き込んだ小競り合い。


「なぁハオ、このとーり!」

ぱん、と両手を合わせて拝む様なポーズをした葉は、伺う様に双子の兄を見つめた。
いつものハオならば、葉にそう請われただけで快諾していただろう。頼み事の内容を聞かなくても大抵のことなら熟せる自信はあるし、可愛い弟の頼みなら尚更叶えてやりたいと思う。
けれど、今回ばかりは話が別だ。

「嫌だったら嫌だね」
「う、な、なぁ、頼む!ハオしか頼める奴いないんよぉ〜」

それはそうだろう。
何故なら、今の葉が必要としている要素を持ち合わせた人間は、恐らく葉の交遊関係を込みにしてもハオしかいない。

しかし。
しかし、なのである。

つん、とそっぽを向いたハオの視界に何とか入ろうと、葉はハオが顔を背ける度にその後をついてまわる。頑として譲る気はないのだと示す為に、ハオは葉が追い掛けてくる度に違う方向へと顔を背け続けた。結果的に、葉はくるくるとハオの周囲を回る事になる。本人達は至って真面目なのだが、その光景はどこか微笑ましい。

「なぁ、ハオ〜頼むから〜」
「嫌だよ。なんで僕がアンナの為に協力しなくちゃならないのさ」
「う、で、でもよぉ〜」

へにゃりと眉尻を下げた葉の上目遣いに、ハオはうぐっと口ごもった。釘付けになりそうな視線を、咄嗟に顔を背けることで引きはがす。
危ない。あの捨てられた子犬の様な目を直視するのは非常に危険だ。
片割れの弟にとことん甘い自覚のあるハオは、ばくばくと脈打つ心臓を押さえ付けるように胸元を握った。白いワイシャツにくしゃりとシワが着くが、今はそんなものに構っていられない。

「ハオ〜」
「しつこいな。嫌だって言ってるだろ」
「だ、だってアンナ絶対練習なんかさせてくれないんよぉ〜」

情けない声で告げる葉に、まぁそうだろうなとハオは思わず納得してしまった。確かに、アンナの性格からしてそんなことさせそうにない。

「なっ?なっ?だからハオッ」

ひしっと両手を握られたハオは、その瞬間自分の失態を悟る。しまった、"アレ"がくる。

「お願いなんよ、にいちゃん」

うるん、と葉がきらきらした眼差しでハオを見詰めながら、最終兵器を投下した。計算なのか無意識なのかは知らない。けれど、その効果は実証済みなのである。

「………………風呂掃除、一週間代われよ」

結局、ハオは撃沈した。
それはもう見事に撃沈した。

「!!」

ぱぁっと葉が頬を紅潮させて喜びを現わせば、尚更弱かった。




「んー?んと、ここがこうなって…?」
「ちょっと葉、痛い」
「あ、すまん。うー…編み込みって案外難しいなー」

その数分後。
うんうん唸りがら、葉は雑誌を片手にハオの髪と格闘していた。ピンクを基調としたキラキラな表紙のそれをみただけで、いささか疲弊する。開かれたページには「夏祭特集!簡単可愛い浴衣アイテム&ヘアアレンジ!」と大きな見出しが踊っていたから尚更だ。

「………むしろ、僕はアンナがこういう雑誌を読むのが意外なんだけど」
「うん?あー雑誌はたまおが持ってたの借りてきたっつってたぞ」
「……なるほどね」

どうやらこれは、アンナからハオに対する完全な嫌がらせらしい。
葉の性格からして、大して親しくもない相手に髪を結う練習をさせてくれなどという可能性はない。異性ならば尚更だ。唯一の例外は幼い頃からの付き合いでもあるたまおや、母の茎子だろう。しかしたまおは結えるほど髪が長くないし、母の茎子にそんなことを頼めば必ず理由を問われるだろう。そうなれば自動的にその二人は候補から外れる。
けれどそうなると、親しい間柄の同性でかつ練習に付き合ってくれそうな人間となれば、数は限られてくる。より正確には、葉が思い付く人間など一人しかいない。ハオだ。

「だとしたら性格悪いなぁ……」
「うん?」
「ううん、なんでもない」

ぼそりと呟いたハオへと、葉が不思議そうに首を傾げる。それに小さく応えながら、ハオは投げやりに雑誌へと視線を投げ掛けた。
幼い時分から葉を取り合って散々小競り合いを繰り広げて来たが、今だにそれは健在のようだ。
とんと変化のない自分達に、呆れと愛しさ混じりの溜息をつく。
何が面倒かといえば、こんなやりとりも案外嫌いではないところだ。

「………………さて、どうしてやろうかな」

簪で華やかに髪を結い上げられながら、ハオは引き攣った笑みを浮かべた。


安らかに融ける


それでも、なんだかんだで傍にいるのだからお笑い種だ。

===

なんだかんだでやっぱり仲良しっていう。
ハオ葉アンの3人が恋愛関係なく其々の形で繋がりながらわちゃわちゃしてんのが最高にかわいいです。

2015.08.04

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