※学パロ
双子+友人'sの仲良し小話。
CPのつもりはなかったんですが、双子が相変わらずブラコン全開でべたべたしてます。


「……おい、なんなのさ。これは」

ハオがひくりと引き攣った笑みを浮かべながら告げると、三者三様の反応が返ってきた。

「おーハオ!遅かったじゃねぇか」
「あれ、ハオくん。なんでそんなにぐったりしてるの?」

団子を齧りながらホロホロが振り返り、リゼルグはクリームあんみつのさくらんぼを木製の匙に乗せたまま、瞳を瞬かせる。
ぐったりと手近な柱に寄りかかったハオを見て慌てたのは、この面子唯一の常識人であり、最後の良心ともいえるまん太だった。そんな彼の手元には、上品に切り分けられた羊羹がある。

「え、ちょっと待って葉くん!ひょっとしてさっき作ったメール、そのままハオくんに送ったの!?」
「うええぇっ!?いや、そんなはずは……ってあああああ間違えて送信ボタン押しちまってるんよ…!」
「あら、大変」

まん太の台詞に、わらび餅を頬張っていた葉が慌てて携帯電話を開いた。恐らく、メールの送信画面を確認したのだろう。葉は画面を見つめながら、真っ青な顔でやってしまった失敗を叫ぶ。
横からそれを覗き込んだアンナは、最中を半分に割りながら全くそう思っていない口調で呟いた。「お前ちっとも大変だとか思ってないだろ」という突っ込みは、怖くて誰も入れられやしない。

「ま、まぁ…お疲れさんって奴だな!」
「しかし、アレを見てここまで走って来たのだとしたら、貴様も相当な阿呆だな」

チョコラブのフォローも虚しく、蓮がハオを鼻で笑いながらぜんざいを口に運ぶ。
反射的に言い返そうとしたハオの台詞は、申し訳なさそうな葉のそれが遮った。

「すまん、ハオ。お前が中々来んから、もっかい連絡しようって話になったんよ」

葉が苦笑混じりに告げた内容から、ハオは直ぐさま状況を把握した。
葉からハオに送られてきたメールは、合計2通ある。
1通目は、アンナと甘味処にいるからお前も来ないか、という内容のものだ。一斉送信されたそれは、今ここにいる全員に共通して送られたのだろう。
そして、問題の2通目がこれである。

===

送信者:葉
件名:ハオ、助けてくれ!
本文:ちょっとマズイことになったんよ!今すぐ来てくれんか!

===

「……………」

自分の余りの盲目っぷりに、ハオはふらりと意識が遠退くのを感じた。
ハオ自身、葉に甘い自覚は痛い程ある。けれどまさか、ここまでだとは自分でも思わなかった。
確かに、これでは阿呆と言われても仕方がないかもしれない。冷静に考えてみれば、緊急事態にメールで連絡をする訳が無いのだ。火急の用ならば尚更、直通の電話で連絡を取ろうとするだろう。葉が事故や怪我にあったならば他の面子から連絡がくるだろうし、店内でトラブルが起こったなら店員もそれ相応の対処をする筈だ。最悪、警察に通報するという手もある。万が一強盗の現場に居合わせて巻き込まれたのだとしても、ただの学生であるハオが呼ばれた所で事態を解決できる訳もない。
そこまでつらつらと考えた所で、ハオはぐったりと葉の肩に寄り掛かった。片割れの慌て様からして、メールの文面を考えたのは他の面子なのだろう。恐らく、ホロホロやチョコラブを中心に、リゼルグや蓮、アンナ辺りが悪ノリしたのだ。メールを誤って送信したのは、携帯を取り合い、揉み合っている内に誰かの指が送信ボタンへと触れたのが原因だろうか。
次々と展開していく自分の思考に、ハオは拍手したい気分だった。惜しむらくは、何故それを葉からメールを受けとった時点で出来なかったのかという事である。

「ハ、ハオ?大丈夫か?」
「いや…まぁ、あー…うん…ちょっと、自分のアホさ加減に絶望してただけだよ…」
「いつもだろう」
「ハオくんて本当に葉くんのこと大好きだよねー」

心配げな葉の言葉に、ハオはぐったりとしながら応えた。
そんなハオに、蓮は真顔で、リゼルグは満面の笑顔で容赦なく追い撃ちをかけてくる。元々疲労困憊気味だった上に、学校からこの店まで全力疾走してきたハオは、流石に言い返す気力も無いらしく無言だった。

「お前ら、あんまりハオのこといじめんなよ」

むぎゅっとハオの頭を抱えながら、葉が蓮とリゼルグを窘める。どうも本人は隠しているつもりらしいのだが、葉もハオに負けず劣らずのブラコンだというのは周知の事実だった。

「まったく、相変わらず騒がしいわね。アンタも葉に張り付いてないで、何か頼むならさっさと頼みなさい」

けれど、アンナの一言が一連の流れをばっさりと切り捨てる。
その鶴の一声で蓮とリゼルグは食べる作業に戻り、葉とハオはぎこちなく品書きを覗き始めた。まん太はほっと胸を撫で下ろし、ホロホロとチョコラブは苦笑を浮かべる。力関係は明らかだ。

「で、お前何食べるんよ」
「そんなに量多く無くていいんだよね。あんまり甘いの食べられないし」
「じゃあこの辺か?」
「んー……ここはやっぱり練り切りとかかなぁ」

ぶつぶつと呟いていたハオも、なんだかんだで食べる物を決めたらしい。素早く店員を呼び、注文をし始める。

「すみません、この練り切りと抹茶のセットで」

そう淡々と告げるハオは、誰がどう見ても非の打ち所のない美少年だった。
言っていることはただの注文にも関わらず、その周囲にはやけにキラキラとした雰囲気が漂っている。伏せ気味の睫毛が肌へと濃い影を落とし、艶やかな黒髪がさらりと肩から零れた。注文をとっている女性店員の声も、心なしか上擦っている。どうやら、一瞬ハオに見とれていたらしい。そして彼女だけではなく、他の女性客の視線も今葉達が座っている席に集中していた。

「うおぉ…相変わらず慣れねえな、コレは」
「まったく、うっとうしい」
「ハオといると大概こうなるからなー…おもしれーから別にいいんだけどよ」
「仕方ないよ。ハオくん綺麗な顔してるからねー」
「それ、リゼルグくんも人のこと言えないでしょう」
「いやだ、褒めても何もでなくってよ!」
「何故貴様が照れるのだ、チョコラブ」

居心地悪そうな葉の台詞を皮切りに、各々が反応を返す。注文を終えたハオは、そんな面々を見て不思議そうに首を傾げた。

「なんだい、皆して変な顔してさ」
「べっつにー?相変わらず生徒会長さまは目立つなーって話だよ」
「何意味の解らないこと言ってるんだ、ホロホロ。僕が生徒会長だって知っているのはお前達だけだろう」

ここには僕らの他に、うちの学校の生徒なんていないじゃないか。
そう訝しげに続けたハオに、葉以外の面々は内心溜息を着いた。顔が良い自覚はある癖に、ハオは変な所で無自覚だ。こういうところは葉と似ている。

「あ、疲れてるのか練り切り美味い」
「おまえ、それは店の人に失礼だろ。でも美味いとか言われると気になるな。一口くれ」
「じゃあお前も一口寄越せよ」
「ん」
「ん。あ、わらび餅も美味い」
「ぶはッ…くく…お前、それ単に腹減ってるだけじゃねえのか」
「…そうかも」

件の双子はいつの間にか、注文した和菓子を互いに食べさせあっているところだった。
女子の間では良くあるが、男同士の、しかも兄弟では中々見ない光景だろう。本人達は無自覚なのだから大概だ。元からハオのせいで注目を集めていたところにこれである。尚一層増えた周囲からの視線に、他の面々は一刻も早く双子が菓子を食べ終わるのを待った。

「ん、御馳走様でした。待たせて悪かったね。この人数だと、支払い一括の方がいいかな?」

はい、じゃあ各々自分の分の料金出して。
練り切りを完食したハオは、当然の様にそう告げた。普段から生徒会を仕切っているせいか、指示に無駄がない。きっちりと集金し、小銭は会計へと出さず内輪で札に交換する徹底ぶりだ。こういうささやかな気遣いは、普段から細かい業務を熟している生徒会長らしい。

「じゃ、僕会計してくるから。皆は外に出てていいよ」

ハオの言葉に応え、他の面子は連れ立って店の外へと出ていく。
鮮やかな朱色だった空は、深い藍色へと変わっていた。

「……皆、コレ返すよ」

数分後。
会計をしていた筈のハオが、何故か渡した金銭を丸々手に持って帰ってきた。

「あ?っつたって、お前…何だよ、奢ってくれんのか?」
「いや、そうじゃなくて」
「ならどういうことだよ」

微妙な顔をするハオに、ホロホロとチョコラブが訳を問う。
ハオは眉間に皺を寄せたまま、ぼそりと呟いた。

「なんか、サービスだってタダにしてくれた」

毎回思うんだけど、これって無銭飲食にならないのかな。
そう真顔で言うハオに、他の面々は苦笑するしかなかった。



ともだちマーチ



仲良しこよしのそんな日々。

===

特にヤマもオチも有りませんが、書いていて凄く楽しかったです。

2011.11.28 memoから格納/加筆修正

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