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ざわざわ、と各クラスにいる生徒達が窓際で騒ぎ出す。
「見ろよあれ……!」
「やっぱり付き合ってんじゃねぇの……?」
「沢田、お前紅海と仲良いんだろ?どうなんだよ?」
クラスメイトの一人から声をかけられたツナはきょとん、と質問したクラスメイトを見つめ返した。
「え?」
「あれだよ、あれ」
窓際を指差され、恐る恐る除き見た。
「あ、れ?
雲雀さんと、霧兎……?」
校庭を雲雀と霧兎が話をしながら登校する。
会話までは分からないが霧兎の反応を見ていると楽しそうだった。
「従兄妹同士らしいし、たまたま仲が良いだけなんじゃないかな……?」
「にしちゃ仲良すぎじゃねぇか?従兄妹同士って噂も本当か分からねぇし、副委員長以外であの風紀委員長と並んでるだけですげぇのに……」
「あはは……俺もそこまで詳しくは無いんだ。」
苦笑いを返しながらツナは校内へ入って行く霧兎と雲雀を見送っていた。
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「じゃあ後でね、恭弥」
「昼休み、一分以内に来ないとお仕置きね。」
「え、」
「じゃあね霧兎」
教室前で聞き捨てならない発言を残して去っていく雲雀を些か青ざめた顔で見つめていた霧兎はどうやって一分以内に応接室に行こうかと思案しながら教室の扉を開けた。
ちなみに霧兎達のクラスから応接室は走っても二分近くかかる位の距離である。
ガラッ、と教室の扉を開けるとクラスメイトの視線が霧兎に集まった。
「……?」
「おはよー霧兎ちゃん」
「おはよ、霧兎」
「京子、花……おはよう」
クラスの女友達である二人と挨拶し、チラチラと感じる視線に居心地の悪さを覚えた霧兎は机の隣に立つ花に声をかけた。
「……俺、何かした?」
「したっていうか……ズバリ聞くけど、アンタ雲雀恭弥と付き合ってんの?」
きょとんとした後に1拍置いてかぁぁ……と赤面した霧兎は口をぱくぱくさせてどもり始める。
「なっ、ど、どど何処でそんな話……っ」
「図星か……」
「ふふ、霧兎ちゃん可愛いー」
「今学校で噂なってるよ、あの風紀委員長と霧兎が付き合ってるんじゃないかって、」
「ちょ、ちょっと待って…!」
京子と花の手を掴み人気の少ない廊下に出ると霧兎はわたわたと慌てながら声をひそめる。
「何で!?」
「アンタね……委員長って誰かと群れるっつかつるむの嫌いな人じゃん。そんな人が誰かと、ましてや女の子と満更でも無さそうにいるんだよ?」
「いや、ホラ哲……あー、草壁ともよくいるし……」
「必要最低限で、でしょ?」
「それに最近はあんまり見ないよね」
「俺従妹だし……」
「関係無いでしょ、アンタ達なら」
霧兎の様子からどういった関係か察している二人だが普段男より男らしさを感じさせる時もある霧兎のこの反応が珍しい為か少しこの場を楽しんでいるようだった。
「ぇ、それどういう意味?!」
「海外じゃ男同士の結婚が認められてたりするし従兄妹同士だからって恋愛しないわけじゃないんじゃない?第一、年齢学年不詳の風紀委員長に理由なんてあってないようなものじゃない。」
スラスラと質問を返され否定出来なくなってきた霧兎はあーだのうーだの呻いていた。
「ねぇ、」
「え……う、わっ」
「僕の霧兎、いじめないでくれる?」
ふわ、と後ろから霧兎を抱き寄せたのは先程別れた雲雀恭弥その人だった。
「き、恭弥っ……」
「あー、はは……霧兎先戻ってるから。」
「後でね霧兎ちゃん」
待ったとばかりに手を伸ばすも、逃げるようにその場を去った二人の背を見つめ行き場を失った右腕を雲雀が絡めとる。
「恭弥?」
「予定変更、昼休み屋上においで。」
「屋上?」
「うん、一分以内にね。」
「む、無理無理!!応接室より遠いじゃん!」
ぶんぶんと首を振る霧兎に雲雀は口端を少し吊り上げて霧兎の耳に唇を寄せる。
「僕のお願い、聞いて?」
「〜〜〜っ!!が、頑張るから遅れてもお仕置きは無し!!」
バッと雲雀から離れて霧兎は女子トイレに駆け込んで行った。
一瞬虚を突かれた雲雀はその背中を見送って内心笑みを浮かべる。
「その顔で男の前歩いたら咬み殺すから。」
勿論男の方をね。
ひらりと学ランを翻して雲雀はその場を後にした。
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