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アレンはゆっくり目を覚ました。
「ここは………!?」
辺りを見渡すと奥にはイノセンスである時計に縛り付けられたミランダが気絶していた。
腕に痛みを感じて左を向くと、壁に向かって何かに腕を打ち付けられている。
「起きたぁ?」
聞き覚えのある声とぷくぅ、と風船を膨らます音に振り返れば、先程チケットを買いに来た女の子がアレンの団服を羽織ってガムを食べていた。
その隣には。
「っリナリー!!ヨリ!!」
大きく巻いたツインテールに臙脂色のようなドレスを身に纏ったリナリーと、左側に纏めた髪を前に流して黒を基調としたゴスロリ系のワンピースにロングブーツを身に纏った傷だらけのヨリ。
ヨリに至っては両肩と両腕、左脇腹、右太腿に自分と同じような杭(浮いている蝋燭だろうか?)に打たれており、重傷の状態。
二人共大きなイスに座って虚ろな目をしており、焦点が定まっていなかった。
リナリーに抱きついた女の子の後ろからアクマが叫ぶ。
「気安く呼ぶな!ロード様のお人形だぞ!」
「ロード…?君が…?」
アレンは右目を発動させるが、ロードを見てもアクマの魂は見えなかった。
「アクマじゃない…君は何なんだ…!?」
「ボクは人間だよぉ。人間がアクマと仲良しじゃいけない?」
「アクマは人間を殺す為に千年伯爵が作った兵器だ!」
「兵器は人間が人間を殺す為にあるんでしょう?
千年公はボク達の兄弟なの。
ボク達は選ばれた人間、神に選ばれた本当の使徒なのさぁ。
ボク達ーーーノアの一族がね。」
ーーーーーーー
ーーーーー
鈍い頭痛と体中の激しい痛みにヨリの意識はゆっくり浮上した。
思考の隅で意識を失くす直前の出来事と、着慣れない服が団服でない事、何故か両肩と両腕、左脇腹、右太腿に何かが刺さっている事を理解し顔を上げる。
「…アレ、ン……リナ…、ミランダ…!」
掠れる声を絞り出す。
先にある沢山の時間に覆われたドームの中からアレンの左腕が現れ、リナリーと自分を掴んで引き寄せた。
「アレン…ミランダ…?」
中にいたアレンとミランダにホッとして、急激に塞がっていく傷も気にせずよろよろとヨリは立ち上がる。
「ヨリ…!目が覚めたんですね」
「ヨリちゃん!!」
「!……っリナ…!」
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