63
煙りが開け、姿を現した凛の様子が先程とは変わっていた。
目には涙をうっすらと溜め、肩程までだった髪は腰まで長くなっていた。
そして、凛は冬獅郎と乱菊を見ると微笑んだ。
「凛……か…?」
『…うん。久しぶり、シロちゃん、乱菊さん。』
「凛…!!」
乱菊も凛が記憶を取り戻したことに気づくと微笑んだ。
「…記憶を取り戻したようじゃな。」
『はい。私が、見たこと、聞いたこと全て。先ほど雷獣鬼が話した通りでした。』
「そうか。…とりあえず、霊圧を下げれるかの?」
『あ、すみません!』
凛は慌てて霊圧を下げると、周りの副隊長等はほっと一息ついた。
「(あんな少女の何処にあんな霊圧が…?いくら榊原家の者とはいえ、そんなに違うものなのか……)」
九番隊副隊長、檜佐木修兵をはじめ、全ての副隊長がたった一人の少女の霊圧にあてられた事に驚きを隠せなかった。
「ところで、何で髪が伸びはりましたの?」
【封じられていた力が解放された。多少の容姿の変化は見られる。】
飄々とした様子で凛の腰辺りまで伸びた髪に触れようとした市丸だが、雷獣鬼によって軽く阻止される。
雷獣鬼は、凛に向ける表情とは別人のような、威嚇するような目で市丸を睨んだ。
「おお、怖い怖い。おたくのペットは忠誠が篤いようやな。」
【んだと?!】
「ぺいっ!!やめんか、みっともない。取りあえずはこれで解散じゃ。凛は十番隊隊長に一任する。」
「分かった。」
冬獅郎が返事をすると、隊長、副隊長はぞろぞろと部屋を出て行った。
凛は、後で十番隊に行くと冬獅郎に告げると、ある人物のもとへ向かった。
『白夜!!』
「…凛。」
凛は笑顔で駆け寄り、白夜も若干表情がほぐれているようだった。
それを驚いたように見つめる恋次。
「…てめぇ、もと貴族だったんだな。」
『あ、うん。そうだったみたい。白夜とは、貴族の繋がりで結構面倒見てもらってもんね!』
「…ああ。」
『……でも、ルキアが白夜が言ってた‘妹’だとは思わなかったな…。』
「…あの時言わなかった私が悪い。」
『ううん!なかなか会う機会無いまま、私現世に行っちゃったし;;』
一人会話についていけない恋次。
そして、苛立ちを抑えるのに必死な男が一人。
【いつまで話してんだ。行くぞ。】
ガッ
仲良さげに話す二人に嫉妬した雷獣鬼は、凛の服の襟を掴んで歩き出す。
『ら、雷獣鬼!苦しいから!!;ちゃんと歩く!』
訴えにより、ようやく解放された凛は、雷獣鬼を連れ、十番隊へと向かった。
2010.02.22
[ 64/90 ][*prev] [next#]
戻る