フリリク企画 | ナノ
のぼせる-1-


「……寒っ」
「降られちゃったね」
「ずぶ濡れだよ。あーもう誰だよ、“絶対降らない”とか豪語してたヤツは……」
「今日は降らない気がしたんだけどなあ……。ほら、午前中は晴れてたでしょ?」
「午前中晴れてたって、午後から降りだすこともあるだろ。天気予報見てなかったのか?」
「天気予報だって外れることもあるんだよ〜」
「おまえの勘だって外れてるけどな」
「……うーん、でも今回は天気予報に軍配が上がる、かな?」
「決めた。もうおまえの言うことは信用しない」
「今回はたまたまだよ!」
「ウルサイ。兎に角、風呂入れよう。寒くて敵わない。あ、そこで待ってろよ。今バスタオル持ってきてやるから」
「う、うん」
「あー、寒い」
「…………」
「今時期風邪なんか引いてたら笑うしかないよな……。今、風呂にお湯ためてるから、湯船張ったら、おまえ先に入れよ。ほら、タオル」
「ありがとう、瑛くん」
「ちゃんと拭けよ。おまえ、濡れネズミみたいになってる」
「うん」
「しっかし、ひどい雨だったな」
「ねえ、瑛くん」
「どしゃ降りってああいうのを言うんだろうな……何だよ?」
「あのね、一緒にお風呂に入らない?」
「……は?」


見下ろすと、あかりの小さな手が袖を引いていた。まだ十分に水気を拭っていないから、袖口からぽたぽたと滴がしたたっている。雨に濡れて額に張り付いた前髪越しに黒目がちな目が見上げていた。その目が何を考えているのか、何を企んでいるのか、さっぱり分からない。思わずさっきと同じ台詞をもう一度繰り返してしまう。



「……は?」
「だからね、一緒にお風呂に入らない?」



そうしてあかりはさっきと寸分変わらない台詞を繰り返した。いや、聞こえてはいた。ちゃんと聞こえてはいたんだ。ただ、理解が追いついていないだけだ。――いきなりこんなことを言いだして、何を考えているんだ、このボンヤリは。




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