フリリク企画 | ナノ
おうちでデート-3-


「……食べるか、ケーキ」
「うん、食べようか……」

何だかお互いにぎくしゃくしながらケーキに向かった。照れてしまって瑛くんの顔が見られない。ショートケーキのふわふわのスポンジ生地にフォークを差し込む。銀色のフォークが白っぽい生地に沈む。一口大に切ったケーキを口に入れた。あまい。おいしい。素直に口にした。

「おいしい……」

よく見かける黄色っぽいスポンジとは違う、白っぽいスポンジ生地は、ふわふわしてるのに弾力があって、少しもちもちしてる。ミルクが濃厚な生クリームとよく合っていて、とてもおいしい。感動していたら、瑛くんの感心したような声が向かいから聞こえた。

「……おまえは本当にうまそうに食べるよな」
「だって、本当においしいんだもん」
「それはよかったな」
「うん、ケーキがおいしいと嬉しいね!」
「はいはい、よかったな食いしん坊万歳」

また何か憎まれ口を言われた気がするけど、気にならない。ケーキを切り刻みながら、あ、そうだ、と瞬いた。一口大に切ったケーキをフォークで指してかかげ持った。瑛くんが胡乱そうな顔をしてフォークの先とわたしの顔を交互に見る。

「“はい、アーン”」
「……何のつもりだ」
「何って、おいしかったから、瑛くんにもお裾わけを……」
「いらないから」
「遠慮しなくてもいいのに〜」
「遠慮してない。丁重にお断りする」
「もう、素直じゃないんだから」
「また頬つまむぞ」
「さ、ケーキ食べよっか!」

ささっとフォークを引っ込める。瑛くんが仕方なさそうにため息をつく気配をつむじの辺りに感じた。瑛くんとは“お付き合い”してるはずだけど、まだまだ甘い雰囲気は望むべくもないのかも。何と言っても瑛くんは照れ屋さんなので。そんなことを口に出したら、容赦なく頬っぺたをつねられそうだったので、言えなかったけれど。




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