朝は仲良く一緒に登校、お昼は手作りお弁当を一緒に食べる。わたしなりに考えた『付き合ってる二人』らしい振る舞い。今のところ何とか全部出来ているみたい。そうなると、やっぱり最後はこれだと思う。


「佐伯くーん」


放課後、帰り支度を済ませて佐伯くんのクラスに向かった。教室の中を覗いてみると、女の子たちが群れをなしている一角があって、その中心には頭一つ背の高い人の姿……つまり佐伯くんがいる。なんていうか、もみくちゃにされているといった風。


「佐伯くーん!」


もう一度、さっきより大きな声で呼んでみる。今度は聞こえたのか、佐伯くんがハッとした顔でこっちを向いた。佐伯くんは声には出さなかったものの、一瞬「げっ」という顔を確実にして見せた。けれど、そこは慣れたものですぐに本音の顔を消し去って建前の顔になった。


「や、やあ! あかりさん!」


そうして、「何かな?」と続ける。引きつる笑顔。わたしが何を言うか予感はあるみたい。


「一緒に帰ろう?」


そのとき佐伯くんが浮かべていたのはあくまで優等生スマイルだったけど、彼がわたしに何を言いたいのか、ちゃんと伝わった。笑顔の目の奥で彼は「マジで?」と言っている。わたしは頷きを返す。――マジですよ、ダーリン。
一瞬の間。わたしはほとんど祈る心地で佐伯くんの返答を待っている。佐伯くんは本音を包み隠す例の笑顔だけど、内心いろいろ考え込んでいるみたい。……断られてしまうかな? お願いだから、と強く思う。わたしはあなたの隠れ蓑になりたい。


「そうだね」と佐伯くん。一瞬だけ浮かんだ、なんだか根負けしたような表情。


「一緒に帰ろうか」


背後で悲鳴が上がった。またしても。



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