私なんかで大丈夫でしょうか。
ああああマジで可愛すぎかよおおおお。紳士、ビビりすぎだしかわゆううううう。82もいいけど28もいいな、本当にいいダブルスペアだよ、BLにおいても。
とまあ何をしているのかといえば『お化け屋敷が苦手な友達とホラゲーしてみた2』を見ている。
『な、なな、何か出てきましたよ〈ピーー〉くん!』
『ホラゲーなんじゃし幽霊かゾンビじゃろ』
『ひっ、逃げても逃げても追いかけてきますよ!!』
『そりゃおまん、ゾンビの方は倒さんといかんしの』
『無理です!あんなのに近づけとっ……!』
ああ〜ニヤニヤ止まんないわ。柳生くんの可愛さに目覚めてしまった。“腹黒似非紳士”な柳生くんに攻められる仁王くんもいいけど、ホラゲーにビビりまくるヘタレ紳士を面白がって笑う仁王くんもよき……。
ちなみに実況動画で名前を呼ばれているところは〈ピー〉という音をかぶせて、わからないようにしているらしい。まあ普段から苗字で呼んでいる相手をいきなり『マサ』なんて呼べないよね。でもマサって呼ぶ柳生くんもなかなか美味しい……。
『おっ、倒せましたよ〈ピーー〉くん!』
『じゃが次に攻撃を食らったら死ぬぜよ』
『回復したいところで……っな!?』
『ククッ、やられたのう』
『あんなところにいるとは思いませんでしたね……はあ、心臓に悪いゲームです。これを普段からされる方はきっと心臓がお強いのですね』
『心臓がお強いのうww』
画面にはゲームオーバーの文字が。突如現れた敵に攻撃されてしまったようだ。
柳生くんってテニスだと不意の出来事にも全く焦らずに対処する冷静さを備えているって以前に柳くんからは聞いたけど、テニスはテニス、他は他なんだね。
ふと、『マサの友達は一人称が“私”でしかも敬語を話す』というタグが目に入って笑ってしまった。確かにちょっと珍しいよね。他にも〈ビビってもイケボ〉〈心臓がお強い方のゲーム〉などがある。
仁王くんが一人でやっているやつもいくつか見たが、結構面白かった。知らないゲームが多いけど簡単に説明してくれていたので割と親切だった。
ある日のお昼。また丸井くんにご飯を誘われて2人で食べていたのだった。
「それで赤也のやつ、真田の鉄拳食らっときよんの。あいつも学習しねーよな」
なんて笑いながら赤也くんの話をしてくれている。丸井くんはよくテニス部であった話をしてくれるのだけど、素敵なエピソード(BLにおいて)も多くて私はいつも嬉々として話を聞く。
「あははっ、でもそこが赤也くんの可愛さだよね」
「ま、そーだな」
それからも会話をしながら食事を続ける。互いにご飯を食べ終えて一服しているときだった。丸井くんがこんな質問をしてきたのは。
「テニス見るのが好きなんだろぃ?だったら自分でしたいとか思わねえの?」
え、その話覚えていたのか……。ここは少しとか答えたほうが怪しまれないのかな?嘘ついているってバレたくないからなあ。
「えっとね、少しはあるんだけど、私あんまり球技得意じゃないし……」
「ドッヂで顔面食らってたもんな!」
ちくしょう、柳くんめ!こんなとこでも話出たじゃんか!!なんて思いながら「はは、そうだね」って私は苦笑を浮かべる。しかし、次の彼の言葉で私の顔は驚きに変わるのだった。
「俺がテニス教えてやるしさ、日曜日遊ばねえ?」
「え?」
きゃぴきゃぴ丸井くんと遊ぶだって〜!?ご飯の間くらいなら話ができることは分かったけど、休みの日に遊べるほど私はイマドキなことできないですよ!?やはり、ここは回避すべく何か理由を……。
「そ、そんな、いいよ?テニス部ってただでさえ休み少ないのに。せっかくの休みなんだから自分のために使って?本当にテニスは見てるだけでいいから……!」
全力で説得しようとするが、返って彼のやる気を刺激してしまったのか、満面の笑みで丸井くんは答えた。
「俺が苗字に見るだけじゃなくてやる楽しみも知ってもらいてぇだけ!遠慮すんなって、な?これが俺のためなの!決まり!」
うーん、決まってしまった……。どうしよう、一日もテニス部の会話が持つわけないしな。っていうか運動苦手な私なんかがテニスできるのか?
困ったなあ。柳くんと仁王くんに丸井くんの趣味とか特技とかもっと教えてもらって何か対策しておかないと。なんて私はオタク友達の顔を思い浮かべるのであった。
梅雨ながらも今日の天気は晴れ。練習に雨が降らないのは数日ぶりで、部活は活気付いた雰囲気であった。
しかし、そんな中で別の意味で浮かれている者が1人いた。
「でな、日曜日に2人で遊ぶことになったんだぜぃ!」
丸井だ。何やら気になる名前ちゃんと2人で遊べることになったらしい。「何話せばいいかわからない〜丸井くんのこと教えて!」と当の彼女が俺に聞いてきたことを思い出す。彼らの温度差に俺は少し笑いが漏れた。
「くく、それはよかったのぅ」
「でもあいつマジで良いやつだな!俺が遊ぼうっつったら、テニス部は休み少ないんだから自分のために使って〜って言ったんだよ」
何かしら理由をつけて断りたかったのだろうと予想がつくが、全くもって丸井には伝わらなかったらしい。それどころか逆に良い印象を与えまくっている。
何だが面白いことになってきてるぜよ。と、面白がっている俺が本当のことを言ってやるわけがない。俺はまたもや話を合わせる。
「珍しいやつじゃのう」
「だろい?俺に遊ぼうって言われてそんなこと言う女子いねえしマジ気になるわー」
丸井はガムを膨らませて何やら考えている。そして、何かを思い出したのか、ガムを口に戻して話し始めた。
「つーかお前最近廊下とかで話してることあるだろ?何話してんだよ?」
「何じゃろな」
「はあ?教えろよぃ」
「秘密は秘密だから秘密じゃき」
ヒラヒラと俺は手を振ってその場を去る。丸井は不服そうにまたガムを膨らませた。
帰宅して風呂に入った後すぐ、俺はパソコンを起動させてじゅえる少女を開いた。学校のもんはまさか俺がこんな美少女ゲーをやっているなんて思いもしないんじゃろな。
いつものルーティンを済ませながら俺はツノッターを眺める。
『いやああああああネタバレはしたくないけど語りたいしマジでみんなfreedomの5巻早く見てええええええ』
『いやいやいやこんなん全国の腐女子が黙ってるわけなくない?ああもう尊いよ塚二……』
『あああこんなんそうにしか見えなくない???』
『むりむりむりむりオタクを殺しにかかってる』
名前ちゃんが荒ぶっている。どうやらBLの話を彼女はしているらしいが、確か「freedom」は丸井も切原も好きな少年漫画だったはずだ。最近はハイスクールガールズ!4とじゅえる少女の話題ばかりだった彼女が少年漫画の話をするのは珍しい。
「あ……教えちゃるか」
ふと、丸井との話題を作るために、丸井について教えて欲しいと名前ちゃんが言っていたことを思い出した。そのため、俺はメッセージで『丸井もfreedom読んどるよ』って送ってやる。10分ほどで返事が来た。
『マジか!でも私、腐った頭でしかあの漫画見てないwまともな感想考えとかなきゃ。教えてくれてありがと』
『おん。あと、これから通話じゅえるやらん?』
“通話じゅえる”というのはそのままだが、通話をしながらじゅえる少女をプレイするということだ。しかし、名前ちゃんからは残念な答えが返ってくるのだった。
『あーごめん、今は漫画描いてる。そのfreedomってやつで萌えが滾ってて。じゃあね!』
断られるどころかメッセージまで切られてしまった。まあ、だらだらとメッセージを続けるのは俺も嫌いなので気にはしない。そのため、こういうところの付き合いがかなりアッサリしている名前ちゃんのそこを俺は気に入っていたりする。自分の時間をしっかり持つスタイルというのも嫌いじゃない。
何やかんや俺も学校ではモテる方なので、どうにか会話を終わらせたくない女というのはいる。それどころか突然電話をかけてきやがる。俺は参謀と同じで所謂“隠れオタク”なのでその辺の女子とは会話が持たん。気まずい。
その点、会話もできるが無駄な会話はしない名前ちゃんといるのはほんに心地ええ。
じゃけどちょっとメッセージ切るの早すぎんか?そりゃ丸井も「めっちゃすぐにメッセージ終わるんだけど俺嫌われてんのか!?」なんて相談しにきたことがあるわけだ。
(~20180724)執筆
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