One second of eternity. | ナノ

Machine―Defective product―
名前が倒れた翌日、仕事を終えてすぐにマシンメンテナンス総合院へと行った。そして、メンテナンスを受け、修理後に整備士から告げられたことは衝撃的なことであった。
「お客様の携帯の不備を直させていただきました。非常に申しあげにくいのですが、実際ならば使用期間があと6年と11ヶ月のところ、1年と11ヶ月になりました……」
「…………」
俺は信じられぬあまり絶句した。嘘だろう?残り、約二年だと?
「行程時のミスが原因かと思われます。申し訳ありません」
深々と頭を下げる整備士に俺は「構いませんよ、お気になさらず」といった言葉をかけられるわけもなく、ただ黙りこくった。整備士は、そんな俺を見ながら申し訳ないというような表情で封筒を差し出した。怪訝そうにそれを見つめると、もう一度彼は頭を下げた。
「このようなもので時間が買えないことは分かっておりますが、ご了承ください」
その言葉の意味は、帰宅して封筒の中身を見ればわかった。中に入っていたのは、謝罪の言葉がぎっしりと書かれた紙とお金だったのだ。
アンドロイド(ガイノイド)は10年という使用期間が初めから決められているが、名前はあと約2年しか動かない。今まで生活した日数を合わせても半分の5年だ。そのためか、俺が名前を購入した金額の半分が封筒に入れられていたのである。
確かに、時間はお金では買えない。それが、誰かと過ごすものであれば尚更だ。
「………っ、」
つい手に力を入れてしまい、謝罪文が書かれた紙がぐしゃりと音を立てて床に落ちた。すると、名前がそれを拾って、紙を広げ始めた。
「苛立っているのですか?珍しいですね」
「決して、名前を作った者や整備士に対してではないぞ」
「私が、不良品だからですか?」
そう言いながらしわくちゃの紙を机の上に置いた彼女を抱きしめた。
「違う。自分に対してだ」
「…どうしてご自分に?」
「もっと早く名前をメンテナンスに出していれば、直っていたかもしれないというのに、俺は…俺は…っつ、」
血が出そうなほど唇を噛みしめた。何故、もっと早くに行こうとしなかったのだろう。多忙であったとはいえ、無理にでも行く時間は作れたはずなのだ。
俺の心の中は、後悔ばかりがぐるぐると渦巻き、自責の念に駆られた。
「…すまない」
小さな声で謝れば、彼女は首を横に振って答えた。
「あなたは悪くありませんよ。私は完成したときから未完成なのですから、きっと直っていません」
俺はそれ以上何も言うことができなかった。ただ、一定のリズムでカチコチと名前から聞こえてくる音に耳を澄ませた。この音がカチッと刻むごとに彼女のタイムリミットが、一秒、また一秒とカウントダウンする。それは、今も刻々と彼女が停止するまでの時間を刻んでいる。

Machine―Defective product―16799:13:44

(これが運命とでもいうのか。)

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