ゴミ箱 | ナノ


▽ おぐりん6(捏造)


それが飾りでしかないことを、きっと彼は知っている。
知っていて上手にあしらうのだから僕よりも相当性格が悪い。
こんな意地の悪い男のことなど見限って、二度と会わなくて済む土地へと移り住み野垂れ死んでしまえばいい。
こんな家も、柵も、彼も、捨ててしまえばどんなにすっきりとするだろうか。
なのに結局行動に移せない僕は、女々しくて、情けなくて、不甲斐ない馬鹿でしかなくて。

(だって、好きなんだよ)

喉が痛い。目頭が熱い。
どこにもしがみつけずにぎゅっと拳を握り込む。
灼熱を飲み込めばついにぼろぼろと目尻から涙が溢れた。

(こんな家でも、柵でも、縋りついていたいほど、慶くんが、)

夢に見た彼女を愛せていたなら、きっとこれほどまでに惨めな思いをせずに済んだだろうに。
僕は、馬鹿だ。




「どう、した…っ、なにやら、気も漫ろといった様子だが……」

耳に直接掠れた声を吹き込まれ、背がぞわりとする。
そのままねろりと耳朶を舐めて首筋に唇を押し当てる慶くんは、僕の様子にどうやら不満を覚えたらしい。
じゅっと音を立てて皮膚に吸い付き痕を残す、そんなことはあまりしない人のはずだったのに。
ちくりと痛んだ首筋に、僕は髪を揺らして首を振った。

「早く、終わらないかな、って、思ってるだけ、ですよ」

立ったままなんて初めてで、膝ががくがくと震える。
へたり込むわけにはいかないからそっちに神経を割いているというのもあるけれど、人払いをしているとはいえここは二条城の一室だ。誰かに見られでもしたら大事になりかねない。没頭出来る方がどうにかしていると僕は思う。

「では、もっと善くしてみせろ。さすれば早く終わるやもしれん、ぞ」

ぐち、と慶くんが僕の中から反り立ったものを引き抜いて、片手でゆるゆると僕のものを撫でるように扱いてくる。
こんな場所なのに、気が気ではないのに、刺激に忠実な僕のそれはべたべたに濡れて更なる刺激を待っていた。

「どうして僕が、そんなこと…っ」
「もっと足を開いて私をしっかりと奥まで咥えよ。浅く出し入れするだけではお前も足りぬだろう」
「っ……!僕は、別に…」
「そのわりにはこちらは足りなさそうに見せるが?」

くくっと笑って、慶くんはまた僕の尻に切っ先を当てた。
淫らにぽっかりと開いた穴は慶くんじゃないと埋められないことを、慶くんはちゃんと知っている。
そこにゆっくりと挿入される瞬間は本当にたまらなくて。
それも分かっている慶くんは、行為の最中に何度か僕の好きなようにじりじりと入り口を念入りに擦ってくれるのだ。

「あ、あ、ぁあ」

大きくて丸い先端が、再び僕の中に埋没する。
きゅううと勝手に慶くんを食い締める僕のそこは、僕の意思を無視して悦んで飲み込んでいく。

「や、だ、慶く、ぁ、あ」

拒絶は、ただの飾り。
歯を食いしばって喉を反らせると、慶くんの指が僕の頤を掴んだ。
肩越しに唇がぶつかる。
歯列を割って入ってきた慶くんの舌が、ざらつく上顎を舐めて僕の舌を絡め取る。
擦り合って、喉を鳴らして唾液を飲み込んで。
夢中になって口を吸う僕を、慶くんが力強く揺さぶった。

「っ、ん、ふっ……!!」
「は、…リンドウ、」

腰を引かれ、深いところを抉られる。
かと思うとずるりと引き抜かれた慶くんの先端が上手に気持ちのいい場所を擦っていくからたまらない。
同時に前を扱かれて、後ろを犯されて、頭が真っ白になる。
息をしようにも慶くんの口が僕の口を塞いでいるし、顎に擦れる髭の感触ですら痛いのに気持ちよくて、立っていられない。

壁にキリリと爪を立てて嫌だとうわ言のように呟きながら、僕は二条城の壁と畳を劣情で汚した。





二条城であんあんな二人を約束していたので……

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