▽ エアアンジェ空色新刊(りょまこまverというか何か色々)
「…本当、君は趣味が悪いよね」
腫れた頬を冷やしている俺に、廊下から声が掛かった。
振り向けば腕を組んで壁に背を預けている男が一人。
呆れた顔をして立っていた。
「おう、帯刀。いつからそこにいたんだ?」
「瞬が部屋を出て行く結構前からかな」
「一部始終?」
「不本意ながらね」
よいしょ、とわざとらしい掛け声とともに背を浮かせて部屋に入ってくる。
座り込んでいる俺の後頭部の髪をぐっと掴み、帯刀は憎々しげに無理矢理顔を上に向けさせた。
「私という情人がいるというのに、瞬をからかって楽しい?」
嫉妬に歪む帯刀の顔なんざ、俺しか絶対に見れないだろう。
「ああ、楽しいぜ。瞬はお前と違って初心でな、接吻一つでこの様だ。お前なら逆に誘ってくるってのになあ」
「……そう。龍馬はああいうつれない態度が好みなの。だったら、私もそうしてあげるけど」
「止めろよ、そいつぁちっと気持ちが悪い。帯刀は帯刀でたっぷり可愛がってやるさ」
「…ふざけないでくれる?私だって、君しか相手がいないというわけではないよ。最近は可愛い玩具を見つけてね、身体の相性もいい。純粋に好意を向けられるというのはいいものだと思っているところだから」
そう言われて頭を過ぎるのは、帯刀の対の男。
二人並んで歩いているのをよく見かけるようになったのは最近のことだ。
「へえ、夢の屋か。お嬢一筋かと思いきや、やることはやってんだな、あいつも」
「君よりもずっと丁寧に抱いてくれるよ。手馴れているね、思ったよりは」
「なるほどな…帯刀、今宵も夢の屋に抱かれるのかい?」
瞬にふられて腐ってるのも面白くない。
軽く目を細めて誘えば、帯刀は眼鏡の位置を直しながらどうしようかなと笑っている。
「君が相手でも構わないよ。桜智よりよくしてくれるのならね」
ちり、と火がつくのは本能ゆえか、嫉妬からか。
瞬の代わりに抱かれることを了承した帯刀の顔を無理矢理引き寄せて、痛みを分けるように淫らな唇に噛み付いた
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