人の声が聞こえない程大きな音を立てて、沢山の水の粒が地面に叩き付けられる。


コンクリートが自分の色を思い出したかの様に、深黒く染まる。



(雨なんて……嫌いだ)



いつもの様にいつもの調子で近づいてくる彼女達に

いつもの様にいつもの口調でバイバイをしてから空を見上げると、いつも青いそれは灰色に変わっていた。


浮上していた気持ちが一気に下がるのが分かる。



せめて止むのを待とうと、僕は図書室へ転がり込んだ。






薄暗い室内で、1人、本を顔に乗せて寝転がっている人が居る。


なんて行儀が悪い。


だけど。



見覚えのある、忘れることのできない、顔。




「………先輩」




僕より一つ上の、


僕より行儀の悪い、


彼。



僕なりの敬意のつもりで呼んでいる呼び名で呼んでみたが、返事が返ってこない。


本当に寝ているのか、この男。



友人の前では馬鹿みたいに騒いだり暴れたりしているのに、1人になると途端に静かになる。


彼なりに友達を大切にしているのだろうが、それでは自分が疲れるだけだろう。



それでも同じ事を繰り返すのだから、本当に大切な存在なのか


ただの、バカなのか。



(睫、長いし…)


(髪の毛サラッサラ……男のクセに)



ずっと触ってみたかった。


ふわふわと風に揺れる彼の髪。



蜘蛛の糸のように細くてキラキラしてて




僕の目標だった、過去。




前髪をふわふわと撫でていると、物凄い速さで腕を掴まれた。


何の前触れもなく。



「…何、してんだお前」


「っ!び、っくりしたぁ…!」



心臓が飛び出るかという位吃驚してしまった。


驚きと恥ずかしさで顔が熱い。



「起きてたなら返事してよね…」


「面倒臭ぇし」


「……はは」



この野郎。


もう乾いた笑いしか出てこない。



「…よし、帰るか」




(…もしかして)



彼は待っていてくれたのだろうか。


なんて、一瞬でも思ってしまった自分に嫌気がさす。



期待するな。


彼は、一生届かない存在だ。



「傘入れてけ。持ってくんの忘れた」


「はいはい」



この気持ちが彼にばれてしまわない様に、苦笑いして誤魔化した。






空は今も尚、灰色に染まっている。




どうか、そのまま。

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