「あれ?なまえちゃん?」
部活の帰り道、私は遊子と夏梨とばったり出くわした。
「やっほー」
「お出かけしてたの?」
「というか、部活の帰り」
今日は土曜日。昨日先生に『土曜と日曜も部活に参加するように』と言われてしまったので、仕方なく学校へ行ってきた。
遊んで帰ろうとジローに誘われたが、丁重にお断わりして帰ってきたのだ。
「へぇ、なまえ姉がんばるね」
「なんか楽しくなっちゃって」
徐々に仕事内容も覚えてきたし、何よりみんながいるから。
そう言うと2人は笑った。
「遊子達はこれからお出かけ?」
「うん。友達と遊ぶの」
どうやら2人は共通の友達と遊ぶらしい。若いって素晴らしいな、うん。
「一護は?」
「一兄ならどっかに行ったよ」
「そうなんだ」
一護が出かけたというなら、きっとチャドくんとでも遊んでいるのだろう。
「じゃあ、気を付けてね」
「うん!」
「なまえ姉もね」
お互い手を振って、分かれ道でそれぞれの道を行く。
寄り道していこうかな。
少し歩いた所で、私は昔良く遊んだ公園に行ってみる事にしてみた。
一護、たつき、私の3人で良く遊んだ公園。
遊子達を見ていたら行きたくなった。
「懐かしいなぁ」
遊んでいた頃の思い出に浸りながら、私は歩みを進めた。
*****
「なんだろ…」
公園に近付くにつれて感じる不穏な気配。
それはまるで、化け物の“虚”のようだった。
吐き気がするような、気持ち悪い感じ。
公園に行くのをやめようかと思ったけど、なぜか足は止まらない。
まるで引き付けられるようだ。
「………っ」
くらくらとする頭を押さえながら公園に着くと、そこには見覚えのあるオレンジ頭がいた。
「いち…」
声をかけようとして止める。そこにいた一護は、なんとも異様な雰囲気に包まれていたのだ。
黒い袴の様な服に身を包み、大きな剣を振り回している。
そばには女の人がいて、なにやら一護に指示を出している。
そして物陰にはもう1人の一護が。
あぁ、私は悪い夢でも見ているのだろうか。
“黒崎に聞いてみるといい”
そう言った石田くんの言葉が頭を駆け巡った。
「チッ、ちょこまか動きやがって!」
「早く仕留めんか!馬鹿者!」
虚と呼ばれた化け物と退治している一護に気を取られて、私は持っていたバッグを地面に落としてしまった。
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