「なまえっ?」
振り返った一護と目が合う。
「一護…あんた何その格好」
「あ、いやこれは………お前、俺が見えるのか!!?」
驚愕する、一護を含めた面々。
一護が何を言ってるのか、私には理解出来なかった。
「アソコニモ美味ソウナ人間ガ」
気持ちの悪い声に虚を見る。
恐怖が全身を伝った。
私と目が合った虚は、その場で思い切り飛び跳ねる。
そして、私の目の前に降り立った。
「しまった…っ!」
一護の声が遠くで聞こえる。
「ソノ魂、喰ワセロ!」
振り上げられた手が、私目がけて下ろされる。
「なまえっ!!!逃げろ!!!」
一護に叫ばれても、私の足は恐怖で動かない。為す術のない私はぎゅっと目を閉じた。
「…………ギリギリセーフっすね」
いつまで経っても襲ってこない衝撃。そして聞こえてきた声。
私はそっと目を開けた。
「浦原さん!」
「どもー」
浦原さんと呼ばれた人は私を守るようにして立っていて、虚の手を華奢な刀で受け止めていた。
「お嬢さん、ケガはありませんか?」
「あ、はい…」
「なら良かった」
浦原さんは虚の手をなぎ払い、持っていた刀を仮面に突き刺す。
虚は悲鳴をあげながら、その姿を消した。
「…………っ」
目の前で起きた出来事に、私はただただ驚くしかなかった。
*****
「なまえ!大丈夫か!!?」
「一護…」
地面に座り込んだ私へ駆けてくる一護。その姿はもう黒袴では無かった。
「なんなの、あれ」
「あれは虚と言って…」
「違う。一護のあの姿」
さっきまで2人いた一護は今は1人しかいなくて、代わりにライオンのぬいぐるみが動いていた。
「あれは…」
「死神の姿だ」
今まで静かだった女の人が口を開く。
「死神…?」
「あぁ」
そして私は彼女から色々聞いた。
死神の事
虚の事
コン(ライオンのぬいぐるみ)の事
そして、尸魂界の事
私は現実離れしたその話を黙って聞いていた。
「………つまり、力を失った朽木さんの代わりに一護が死神になったわけか」
「うむ」
「それにしても、なんで浦原さんが」
一護につられて私も浦原さんを見る。すると彼は笑った。
「たまたまっすよ、たまたま」
「あの、ありがとうございました」
危ないところを助けてくれた浦原さんに頭を下げる。
「いいえー。貴女にケガがなくて良かったっす」
浦原さんは扇子でパタパタと扇いでいる。
………あれ。
「私、浦原さんと前に会った事あります?」
その言葉に、浦原さんは驚いていた。しかしすぐにさっきの笑顔に戻る。
「いえ、初めてお会いしましたよ」
「そう、ですよね…」
あの、扇子をパタパタと扇ぐ姿わ懐かしく思ったけど、どうやら私の勘違いだったらしい。
変なの…。
そう思いながら、視線をコンへ向けた。
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