「みょうじ、なんだそのスカート丈は」
昼休み、芥川くんに誘われて中庭でご飯を食べようと歩いていた時だ。体育の合田に止められた。
「……別に、みんなと同じだと思いますけど」
合田は生活指導でもある。良く私の粗を探してはそこをネチネチと説教してくる。
「いや、お前の方が短い」
明らかに彼は私を敵視している。入学した当初からそれは変わらない。
きっと、教師には手を出さないと思っているから。
そんなの当たり前だ。教師に手を出すほど常識外れではない。
「そんなことありません。先生の目の錯覚じゃないですか?」
「教師に向かって口答えするのか?」
別に口答えじゃないと思う。だって私より短い人はたくさんいて、正しい事を言ったまでなのだから。
「とりあえず、生徒指導室に来なさい。スカート丈を測ろうじゃないか」
「イヤだ」
芥川くんとご飯の約束があるのに。なぜコイツを優先させなきゃいけないんだ。
てか、何で今どきスカート丈を測るのか不思議なんですけど。
「いいから来い!」
「ちょっ、何すんだよ!」
無理矢理腕を掴まれ、合田に引きずられそうになる。それを足に力を入れて留まろうとするが、相手は男。そしてガタイがいい柔道部の顧問。
力の差は歴然としていた。
「先生」
頑張って踏張っていると、横から低い声が聞こえてきた。
「これからテニス部のミーティングなんやけど。彼女も一応テニス部なんで手ぇ放して下さりますか?」
「忍足!」
忍足くんのまさかの登場に、私は目を丸くした。
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