「こんにちは」
浦原商店の入り口で掃除(正しくは箒で野球)をしているジン太くんとウルルちゃんに挨拶を交わした。彼らは遊んでいた手を止めて私を見る。
「おっ、赤髪のねーちゃん」
「こんにちは」
ジン太くんは白い歯をニッと覗かせ、ウルルちゃんはペコリと頭を下げる。そんな彼らの頭を撫でた。
「喜助さんはいる?」
「中にいるぜ」
「こっち」
ウルルちゃんに腕を引かれ、私は浦原商店へ入っていった。入り口には駄菓子が陳列されており、テッサイさんがそこを掃除していた。
「む?なまえ殿、よくぞいらっしゃいました」
テッサイさんは私と目が合うとムキッと筋肉を見せた。
「こ、こんにちは」
ムキムキの筋肉に顔を引きつらせて挨拶をする。後ろで狼焔が声を押し殺して笑ってるのが分かった。
「いかがなさいましたかな?」
「狼焔が喜助さんに用があるみたいで伺ったんですけど…いらっしゃいます?」
「おりますとも」
テッサイさんはキラーンと眼鏡を輝かせて、右手で店の奥を指し示した。
「お邪魔します」
「どうぞ」
靴を揃えて脱ぎ、部屋に上がる。居間へと繋がる障子を開けると、喜助さんと夜一さんがお茶をすすっていた。
「おや、なまえさんじゃないっスか」
「よく来たな」
彼らは笑顔で私を迎えてくれる。それに安心して私も笑顔を見せた。
「こんにちは」
「どうぞどうぞ、お座り下さい。で、今日はどうしたんです?」
扇子をパタパタと扇いで此方を見ている喜助さんに、私は狼焔を横目で見た。それに気付いた狼焔が私の隣に並んで座った。
「……頼みたい事があって来た」
「頼みたい事?」
キョトンと狼焔を見る喜助さん。私も同じように狼焔を見た。
頼みたい事ってなんだろ…。
ふと、狼焔と目が合った。彼の瞳の奥は切なげに揺れている。
狼焔…?
彼はぐっと拳を握った後、重たい口を開いた。
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