剣先から狼の形をした炎が飛び出して、お父さんに向かう。
お父さんはそれを自分の神鳴丸で消し去った。
「や、だ…っ」
「ダメですよ、なまえ。貴女に逆らう力などない」
「なまえっ!」
意識ははっきりしている。でも身体が言う事を聞かない。
再び、勝手に刀を構える私。
そこから炎が飛び出す。
やめて…やめてよ。
「ほら、みょうじ三席。凌ぐだけじゃなまえを助けられませんよ?僕を倒さなきゃ」
「………っ」
お父さんは桐生さんを見る。そして瞬間移動をして彼の前に姿を現した。
…が。
「なまえ…っ」
私が間に入れられる。そして私は、動きが止まったお父さんに刀を振り下ろした。
カキンッ
金属と金属がぶつかり合う音が響く。
「おと、さ…」
「なまえ、少しの辛抱です。必ず私が助けますから!」
怖い。刀を握っている事が。
お父さんに向かって刀を振り下ろしている事が。
自分の力が。
その間も私の刀は勝手に振り下ろされる。お父さんは神鳴丸の姿を戻し、ただの刀でひたすらに受け止めて躱すだけ。攻撃は絶対にしてこない。
「クックッ…いやぁ、いい光景ですね。ぞくぞくします」
「桐生…!」
「おっと、よそ見をしてると…」
「くっ」
「斬られますよ?」
お父さんの右腕を掠める。避けられたから良かったものの、後数秒遅かったら深手を負っていただろう。
「お父さん…っ!」
「大丈夫ですよ、なまえ」
それでも痛いと思う。顔を歪めているお父さんを見ていると涙が出てきた。
「狼焔っ!攻撃しちゃダメ!」
“……っ、だめだ。桐生って奴の力が強すぎて抑えらんねぇ”
「でもこのままじゃお父さんが…」
「なまえ、ごちゃごちゃと煩いですよ」
パンッ
頬を叩かれた。じんじんとそこが痛む。操られているせいで押える事が出来ないでいた。
「やはり感情だけ残すのは面倒臭いな。次からは感情と感覚をなくそう」
「ひっく…」
私がもっと強かったら、操られる事なんてなかったと思う。
そうすれば誰も傷つかなかったのに。
なんで私は弱いんだろう。
“なまえ…”
中にいる狼焔が心配そうな声を上げた。
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