大好き




「優一くん」

凛とした、まるで鈴のような声が耳をくすぐる。けれど僕は顔には出さず振り向いた。

「なんですか?」

「呼んでみただけ」

ふわりと微笑んで、なまえさんは紅茶を口に運んだ。

「用がないのなら呼ばないで下さい」

「えー、いいじゃん。だって優一くんが好きなんだもん」

ぶっ、と吹き出してしまった僕を彼女は面白そうに眺めている。

「あ、貴女という人は…!」

「ふふふっ」

カチャリとカップをテーブルに置いて、なまえさんは僕に近づいた。

「大好きよ、優一くん」

僕に合わせてしゃがみこむ彼女の視線から逃れようと、僕はふいっと横を向いた。

彼女のペースに飲み込まれたら負けだ、とよくわからない考えが頭の中をぐるぐると駆け巡る。

「優一くんは私の事、好き?」

「…さぁ、どうでしょうね」

「いーじーわーるー」

なまえさんは頬を膨らませた。

大好きだ、と言葉にするのはとても恥ずかしい。それを知っているはずなのに彼女は言わせたがる。

「私はこんなに優一くんが好きなのになぁ」

「…………」

ちらりと彼女を見るとにこにことこの状況を楽しんでいるのに気づいた。

「ねぇ、優一くん?」

「……………」

僕はふぅと息を吐いてなまえさんに向き直った。

「なまえさん」

「はい」

「……………す…」

いざ言おうとしたら言葉が喉に貼り付いて出てこない。必死に絞り出そうと試みると、叶いそうにもなかった。

「だめです、やっぱり言えません」

「もう、仕方ないなー」

てっきりむくれるかと思ったのに、なまえさんはあっさり引き下がった。かと思えばぐいっと腕を引かれ、気付けば僕は彼女に抱かれていた。

「そんな優一くんが大好き」

「…………っ」

全身の熱が顔に集まってくる。心地よい彼女の声音に僕は身動きすることが出来ずにいた。

「これからも私の隣に居て下さいね」

「あ、当たり前でしょう。じゃなきゃ誰がなまえさんを守ると思っているんですか」

「ふふっ」

嬉しそうに微笑んだ彼女は、僕を抱き締める力を強くした。



大好き

(あー、優一くん可愛い。結婚したい)
(け…っ!!?)



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