「花嫁修業?」


「……そうだ」


「で、花嫁修業だと知られないように男装して日本で色々学んでいた、と」


「……おう。リング戦が終わってからも俺だけ居残りだ
特に学ぶ相手もいねえから適当に料理スキルだけ上げてって感じだけどな」


「……。なるほどね。ある程度の状況は把握したよ
で、綱吉をどうするの?」


飛行機のファーストクラスに座る3人の1人、黒髪に切れ目の少年、雲雀恭弥が目の前に座る銀髪の長い髪を弄る青年、否、女性…スクアーロを睨みつけると彼女は顔色ひとつ変えずに答えた



「アイツは連れてこいと言ったからなぁ…それに日本に置いとくわけにもいかねぇだろ」


「まぁ一理ある。で、彼はよく承諾したね
綱吉を嫌ってるんじゃなかったの?」


「ハッ、アイツは嫌ってなんかいねぇよ。むしろおもしれぇって笑ってやがったからなぁ!
女のくせに何もかも偽ってきたんだ、少しくらい休ませてやれ、だとよ」


「彼女を保護してくれるのは助かるよ。僕もこれ以上は匿っている余裕はなかったから
全く…人の家に土足で上がり込んでは荒らしていく非常識な奴らだったなんてね
運よく……というよりも見張ってたから運もくそもないけど助けに入ってくれてよかった……」


自分の家にまで乗り込んで荒らしていった挙句、隣で今は眠っているがそんな彼女を怯えさせて無理やり引っ張っていこうとしていた奴らの顔を思い出しては怒りを口元だけとは露わにしていた
そんな雲雀が吐き捨てるように窓を見るとふと浮かんだ疑問を一つ、口に出した


「ねぇ、ボンゴレとやらは君たちに綱吉のことは話を通してないのかい?」


「ああ。9代目からは何も話を聞いちゃいねぇ。あまりにも静かすぎると疑ったアイツが綱吉に話を聞くのが手っ取り早いと思ったから俺が並盛に行くとこれ……ん?」


「どうしたの」


「噂をすれば何とやら、だ。
なんだあ、ボスさんよぉ。肉ならレヴィに《ミラノにこい。ベルに向かわせた。そこで落ち合え》ブチッ

クソボスがぁぁあッ!!言いたいことだけ言いやがってあのくそったれ!!!」


「…ミラノ?わざわざなんで」


「アイツはボンゴレに見切りをつけたんだぁ!ったく!」


「ふぅん。…あ、そうだ、携帯貸して」


「ああ?別に構わねぇが…」


「ありがと。…えっと、彼女の番号が……」


ダイヤル表示にして数字を押していくと携帯を耳に当てる。その前では操縦士に無線で到着地点の変更にあった旨をそつなくこなしていく


《も、もしもし……》


「やぁ、クローム髑髏。雲雀だけど」


《あ、雲の人…?》


「うん。僕の携帯あいつらに壊されたからね
六道には変わらなくていい。僕達は今、スクアーロと一緒にヴァリアーの方に向かってる
君たちにはとりあえずそれだけ言っておこうと思って」


《わかった…ボスが無事なら、よかった…。あと、何もできなくてごめんなさい……》


「気にしなくていい。君たちは綱吉を裏切らなかった
それだけでも彼女は救われていたはずだよ」


《……っ、ありがとう…!ボスをお願い……》


「うん、…じゃ」


通話を終えるとスクアーロは意外そうな目を向けていた


「あいつらは味方だったんだな」


「味方ってほどでもない、手を出せなかったんだよ、赤ん坊のせいでね。だから厳密には中立の立場ってところ
綱吉がずっと六道とその一味を心配していたからとりあえず言っておくべきだと思って」


「へぇ、アルコバレーノも相手だとなると厄介だなぁ。そんなにその女は実力あんのか?」


「いや、人望はないよ。ズル賢いというか、薬を撒いて従わせてるというのが正しいかな」


「薬ぃ?ンなもん使ってんのかぁ?!
…ん?だとしたら、沢田は超直感で避けたと考えられるが、てめぇはなんで従ってないんだ」


「初代雲の守護者とやらに言われたんだよ、薬に気をつけろって
最初は何のことかわからなかったけどヒバードが察知したんだ。おかげで従わされずに済んだ
あんな女に従うなんて御免だ」


「……ということは初代の奴らは味方かぁ」


【当然だ。あの女の出生を知っているからこそ最初から否定的な目を向けた】


炎を纏いながら実体化したプラチナブロンドの髪で少し癖っ毛がありコートを着た男が青の瞳で雲雀を見下ろしていた


「……勝手に出てこないでもらえる。僕と戦うつもりなんてないなら、【…あとで戦ってあげるよ。仕方ないけど、このままだと犬死されそうだし】…どういう意味」


【君たちの敵は想像以上に多いということさ
ボンゴレは腐敗物を抱えたおかげで繁殖して腐りきった。チェデフとやらも終わりだろう
シモンの人間もカビを抱えたんだ
彼らを相手にするということだ】


「それなら僕だって戦える!僕は並盛であいつらを相手に…。っ!!」



挑発されて頭に血が上った雲雀は立ち上がりトンファーを構えようとしたが攻撃できずに動きを止めてしまった
彼の額にアラウディの手に握られた銃の銃口を突きつけられていた


【そこの彼女がこなかったら今頃君は大空を守れないまま二人で朽ちていたということを理解するべきだ
今の君だと大空を守るには力不足】


「そんなこと、わかってる……っ、僕は綱吉を守ることすらできなかった!」


【今は休みなよ。着いたらどうせ鍛錬ばかりになるんだ
じゃ、僕は失礼するよ。あいつらがこっちに寄ってきて煩くて仕方ないんだ】


「言うだけ言って帰りやがった…
……まあ、向こうに着いたらボスがなんか言うだろうから寝とけ。着いたら起こしてやる」


「…じゃあお言葉に甘えるよ」


「(ったく、年端もいかないガキ二人を集団でリンチとか頭湧いてやがんな、あのアルコバレーノ…)」


眠りについたのを確認したスクアーロが頬杖をつきながら綱吉の傷だらけの体を見ながら息を吐いた後雲と空しかない景色へと視線をやった


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